CRF250L 3月の九州野宿旅(2日目)

翌朝、朝一番で鹿児島市街地の小高い山の上にある城山公園へ。鹿児島へ来たからには桜島をじっくりと見てみたいじゃない?

街の中にこういう「丁度良いサイズの山」があるというのはとても良いですね。展望所へ到着すると、朝からウォーキングをしたりベンチで腹筋をしたりの健康志向グループとか、桜島へカメラを向けたグループとか、朝6時前から結構な人が集まっていました。この時期は太陽が桜島越しに昇ってくるんですね。

僕の本来の目的は、こっち。

西郷隆盛銅像、昔から上野で見慣れてきた犬連れ和装のお姿とはずいぶん違うな。

桜島と鹿児島を往来するフェリーの特徴は、車両甲板が上下2階層になっているところと、窓口でチケットを買うわけじゃなくて桜島側に有料道路の出入口みたいなゲートがあるところ。

船旅は短い航路でも旅感増します。

薩摩半島側から大隅半島側へ渡るのには、陸路で延々北側を迂回するか、両半島の先端の方で指宿〜根占間のフェリーを使うかというルートが選べますが、この鹿児島~桜島間を渡れるというのはルート選びの自由度高くなってとても助かります。

その昔、GWだったかな、指宿まで行って最終便のフェリーが満杯で乗船を断られた時にかなり絶望した苦い思い出が‥あれがあって以来、実は船を使うルートには若干のトラウマがあっていつまでもそれが抜けない。

初めて桜島へ来たのは30年も前になるかと思います。その時は「桜島へ来ること」自体が大きな目的でしたが、あれから何度か訪れることで今回は「桜島で何をするか」を目的にできるようになりました。とりあえず足を運んだことがないエリアを巡ってみます。

ふとバイクを停めた展望所、見晴らしがよいのかと思ったら、

展望はそうでもない。よく見ると石碑には「烏島この下に」と書いてあります。

ここは大正の大噴火で、桜島の沖合500mにあった高さ20mの烏島が桜島と陸続きになった‥どころか島全体が溶岩に埋もれてしまったとのこと。江戸時代に島に設置された砲台も溶岩に飲み込まれてしまったそうです。

噴火で陸続き(?)にでもならなければ訪れることはなかった場所ですね。それを言ったら地表のどこでも結局そんなもんか。変化している世界の、今の一瞬を生きているんだなぁ、と考えさせられる場所でした。

2004年にここで開催された長渕剛のオールナイトコンサートを記念して作られた「叫びの肖像」。2004年当時鹿児島市民55万人だったところを7万5千人集まったとか。

武道館の座席数が1万4千席(コンサートでは1万程度)、東京ドームで5万5千人だそうですから、そりゃさぞすごい熱気だったことでしょう。

写真では伝わらないなぁ。電線が光を受けてとても綺麗だった道。

湯之平展望所。こちらは25年くらい前に訪れてジャンプ写真を撮りました。フィルムカメラを使う最後の年だったように思います。

鹿児島湾北部は直径20kmの姶良カルデラです。とても綺麗な円形をしていて、桜島は噴火口のある外輪山の一部ということ。

薩摩半島側を見ると、外輪山らしい様相が見て取れます。鹿児島市街は外輪山の外側になるんですね。

広島の地元の山の中を走る感覚で島内を徘徊をしてみました。島には人が住んでいないんだろうと勝手に思っていましたが、北部の海岸線には街が連なっていて、島だということを忘れてしまうくらい人が住んでいらっしゃるのに驚き!

お墓もありましたが、全戸片流れ屋根付き。気持ちはとてもよくわかります。墓石そのものを片流れ形状にして地域性を醸すという発想はなかったんだろうか。四角錘やら円錐の墓石にするとか。

海岸線を流していると、避難場所として港が指定されています。噴火が起こった際、脱出用の集合場所が予め定められているのです。噴火は起こりうる危機として可能な限り被害を減らす努力が見て取れます。

噴石から身を守る退避壕も道端でたくさん見られます。

中に貼られたハザードマップを見ると‥島のほぼ全域が黄色の枠に囲まれ、海上も赤い枠で囲まれています。

黄枠:大規模噴火後まもなく火砕流が到達する可能性のある範囲、赤枠:大規模噴火とほぼ同時に噴石が落ちてくる可能性のある範囲。

こりゃ大規模噴火が起こったらすぐに避難しないととても大変なことになりそうです。観光で訪れる人々もこれは把握しておかないとまずいですね。

過去の噴火についても学べる場となっています。桜島についてのアースキャッシュで学んだのですが、2010年あたりは、年間1000回を超える噴火があったそうです。年間1000回って人が1年間に食事する回数に近いじゃないですか。息をするように嘘をつく、じゃないけれど、飯を食うように噴火する、ですね。当たり前のように生きている火山なんですね。

山の斜面で見つけた看板。自動車が普及する以前に島内の人々が地域間を移動するために作られた石畳の道だそうです。

自動車道だと道の傾斜はある程度以上にはならないけれど、徒歩道なのでそこそこ傾斜のきつい容赦ない急坂。この手の石畳は現存するのはここだけとのこと。他の道は車道の下になってしまって、ここは傾斜が急だから生き残ったってことかな。

展望台に登る階段に火山灰。使われていないような道の真ん中にも灰の山ができています。もう、どうしようもないのでしょう。

大正の噴火で埋もれてしまった高さ2.5mの門柱の、先端部分だけが現在の地表にのぞいています。

桜島の桜。

こちらは埋没鳥居。今自分が立っている場所が大正時代は宙空だったかと思うと不思議な気分がします。僕らの立ち位置は、その下にいろんな歴史や文化や物質的なモノを積み上げた上にあるのだな、と思わされます。

桜島、抱えているモノも歴史も分厚すぎて、掘れば掘るほどいろいろ見つかるのがとっても面白い。今回はこれまで走ったことながなかった北側半分を見て回りましたが、次は改めて南側もじっくりと走ってみたいです。

桜島がくっついている垂水に入ってすぐのところに江之島温泉共同浴場という文字が見えたので立ち寄ってみました。まだ早い時間だけど入浴できるようです。

番台がないな、と思ったら、横の建物に受付と案内が出ていました。

なんか、ものすごく自由。普通の民家の土間。

生活感たっぷりですよ。

お風呂は洗い場の中央に四角い浴槽があって、熱い風呂とぬるい風呂に仕切りで分けられているタイプ。少し塩味のする優しいお湯でした。350円で朝からスッキリ。

共同浴場の駐車場に停めた俺のCRF、桜島をバックにかっこいいな。荷物がキュっとまとまっていて、走りに期待ができそうなスタイルで。実際とても頼もしく走ってくれます。

広島の桜はまだまだ蕾だというのに、鹿児島界隈はほぼ満開でした。春のこの時期は桜ってこんなに植えられているのかと毎年気付かされます。今回のツーリングは本当にたくさんの満開に近い桜を楽しむことができました。

蕎麦でも食べたいな、と思いながら走っていたら現れた蕎麦屋に飛び込む。

ここから先、ひたすら走れば夕方までに阿蘇までは行けそうだけれど、阿蘇で一晩ハンモックで過ごすには寒いんじゃないかと思って、今日は距離を稼ぐのをやめることにしました。

とたんに気が楽になって、近隣のジオキャッシュを探してみると、近隣にうまい具合に点在しています。キャッシュハントをメインに考えるんじゃなくて、それらを繋いで走ることを楽しむつもりで立ち寄ることにしました。

で、最初に訪れたアースキャッシュ。何ここ、すごい。甌穴(水流で小石が転がされて岩を削って作った地形)とは書いてありましたが、僕のこれまで見知っている甌穴とは違った様相です。

「谷田の滝」と書いてあるので、一応滝の扱いみたい。確かに上流側とここを超えた下流側には結構な落差があります。おかげで甌穴をつくるエネルギーも大きかったってことでしょうか、とにかく縦方向に深いのです。高さの揃ったテーブル状の表面から水面まで5mくらいある。

全然観光地化されていないのですが、そこがまた良いですね。

谷田の滝へのアプローチ路がこれだし。この先道幅が軽自動車1台分になっていて、車なんて来ないだろうと思っていたら軽トラがやってきたので、僕は路肩の盛り土の中に乗り上げて避けましたよ。

次に訪れたのが、この横瀬古墳。田んぼに囲まれた前方後円墳です。

結構大きくて、古墳を囲む道がダート路になっています。とりあえず一周。

こういう古墳の山の部分って私有地なんだろうか?

木の根元、木の根元‥見えてます。

わー、結構賑やかなものがジャラジャラ出てきた。適当に戻していたら少し潰れた缶に全部収まり切らない。立体テトリスです。

方側から後円側の緩やかな丘を望む。

円側から前方側を望む。こちらは木が茂って小さな森になっています。

あとひと月ほど経ってGWあたりになると日なたの日差しは殺人的になりますが、3月末のこの陽気は素晴らしく気持ちが良い。

ここで前日の疲れと寝不足から、活動に必要なエネルギーが枯れてしまって、草むらに横になって30分ほど寝ました。

急がないので、距離を稼ぐための国道は避け、川沿いの土手にダートがあるとあえてそちらを走ります。土手って高さがあるので低いところを走る国道と違って周囲を見渡せるし、場所によっては満開の桜並木の下を疾走できて、とにかく移動の楽しさが爆上がりです。

「一きれの 雲もない 空のさびしさ まもる 山頭火」

いい歌だな。日南線終点の志布志駅。

こちらもアースキャッシュで訪れました。ここも舗装道路から外れてダートを乗り越えてこなくちゃならないところで、普通人はやってこないところでしょう。それどころかグーグルマップにも案内が載っていない崖。

山超えしていたら、古い小学校がありました。遊具も建物も、僕が小学生のころからあったんじゃないかと思うような、それでもボロさは感じない経年による味が漂う、全面天然芝の校庭の学校。この学校も当時としてはいわゆるステレオタイプの小学校だったのかと思いますが、今はそれがノスタルジーにつながる魅力につながっています。もうこんな学校作れないものな。こういう学校を卒業できたら、一生の思い出になるね。

大好き、シンプル無人駅。キャッシュのおかげです、ありがとう。

丸暗記できそうな時刻表。

丁度14時26分着の汽車がやってきました。さっき山の中で停まって地図をみていたらプワーンと遠くから汽笛が聞こえて、良い田舎だな‥と思った汽車。線路と並走する道で追いついて、しばらく等速で並んで走って別れた汽車。ここでまた接点ができました。

川沿いの土手を往くスタイル。飛ばそうという気にならないのがまた良い。

曇り気味になってきたので景色に期待ができないだろうと都井岬をすっ飛ばして日南海岸へ出てきました。ここ猪崎鼻にもアースキャッシュがあります。4年前にセローで訪れた際には満潮で海岸へ降りられませんでしたが、今回はバッチリ干潮。

いろんなところにいろんな地形と地層。九州はこういう側面で楽しむと、何倍も訪れることに意味が深まるから、みんな地形地層マニアになった方が良い。

またここがすごい課題で、一見こういう目立った層だとか、

変わった模様だとか、

異なる質の地層が積層している路頭とかに目がいくじゃないですか。でも、ここではその層と層の「間」部分が課題になっています。こんなのどうやって見つけてくるんだ?とあちこちでアースキャッシュを仕掛けているhikohohodemiさんには頭が下がります。とても勉強になりました。

体調はまた段々悪化してきて、頭痛と疲労感でヘトヘト。休めば良いのにキャッシュがあるからついつい拾いながら進んでしまうという、もうすっかり習慣性のある薬物に取り憑かれたダメ人間そのものです。

海沿いの道を走っていて、ふと目に入ってUターン2度見した祇園神社さん。裸電球が岩山の奥まで連なっています。

侵食でできた穴なのか崩落でたまたまできてしまった穴なのかな、一部人為的な感じもしますが、ほとんどは自然にできた穴なのだと思います。

奥に収まっているお社が見えてはいますが、かなり深い。

内部にはどこへ続いているのかわからない階段があったり。鳥居の直線と交点の位置関係が何かこう、許容の限界を超えているように思える。このサイズで人が通れるように作るとこうなっちゃうのか?

入り口側を振り返る。リバースなのかと思ったら、

右方向に「順路」って書いてある。面白い。

特に案内はなかったけれど、明らかに胎内潜りを思わせる素直には通れない通路が外へつながっていました。

これ、上からぶら下がっている岩は天然のものだけれど、侵食でできたんだろうなぁ。鍾乳石でもないのに上側からこういうぶら下り方をするような岩ができるのってどういう発達過程なんだろうか。

下手に飾った神社をお参りするよりは、よほど良い体験になりました。映えるだのなんだので有名になっちゃって、ここの神様が驚いてしまうほど賑やかになりすぎませんように。

ひたすら鬼の洗濯板の続く海岸。海、空、道以外何もない海岸線をひたすら走れる日南海岸の強烈なアクセントになっています。

道沿いに延々何キロにもわたってつながっていますが、見えているのはほんの一部なのでしょう。地中や海中にも延々と広がっているんでしょうね。まぁ、地中ではこんなにでこぼこしていないんでしょうけれど。

ここもアースキャッシュで訪れました。ロープを伝って崖下まで降りると、ここは砂岩のプレートでした。

ある神社のアコウの巨木。

カモフラージュされた可愛いコンテナ。

ああ、晴れていれば見応え100万倍なんだろうけどな。雨よりは100万倍マシだけれど。

これも前回拾えなかったキャッシュ。無事ゲット。人間の方はもう頭はグワングワンに痛いし、耳鳴りはひどいし結構限界です。

宮崎市内の閑静な宅地の公園にお邪魔させていただきました。

この日、太陽が沈んで暗くなる20時前にはハンモックに潜りこんで、とにかく寝ることに徹しました。前日よりは気温が高く、明け方4時に13度。寒さ対策で全身を覆えるアルミを蒸着した不織布を持ち込んでいたので明け方頭まで被ってみると、寒さを感じることは全くなく、むしろ汗をかくくらいでした。

このthermoflectというアルミ蒸着不織布は手術の際に患者の体が冷えないようにするためのもので、エアマットの下にこれを強いてシュラフに包まった上にさらにもう1枚thermoflectを被せてサンドイッチ状態にすると過去に外気温2度でも寝ることができました。かなり保温効果が高いです。難点は通気性は低いので頭まで被ると結露してしまうところ。

朝5時まで、9時間ハンモックで過ごしました。8時間は寝たかな。

【3日目へ続く】

1 Comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です