CRF250L 秋の阿蘇 1/2

昨年の5月末以来、1年半ぶりに阿蘇へ行ってきました。

春に夏に阿蘇へはこれまで何度も訪れました。阿蘇のベストシーズンはGWが終わって数週間経った頃、春の野焼きで黒焦げになった丘が完全に鮮やかな緑に覆われる時期だ。と考えています。

珍しく10月末の秋の阿蘇に訪れたのはもう16年前にもなる。「阿蘇=緑の世界」という先入観からか、その時はススキ野原になったミルクロードを走っていても、今一つパッとしませんでした。その時は秋には2度と来ないだろうな、と思いました。

ところが先日、都会から阿蘇へ移住した方のある記事のなかで「阿蘇のベストシーズンは、秋だ」という一文を見つけました。うん、昔の感性では受け止めきれなかった秋の阿蘇の魅力が、もしかすると今なら新しい感覚で捕えられるんじゃないだろうか。

また、阿蘇から50kmほど離れた熊本県内にチブサン古墳があるのをみつけました。日本美術史の本を開くと初めの方に必ず載っている古墳時代を代表する完全に日本人の感性に由来する装飾古墳です。昔からこの古墳の強烈な幾何学模様と目玉とも乳房ともつかない〇に点の文様に妙に魅かれるものがあって、見に行ける距離なら行ってみよう!というのが今回のツーリングの目的となりました。

ここ数年は大分県の中津市あたりまでハイエースでバイクを運んでそこからスタートするのが定番になっていました。船の時間に縛られることなく、また九州から広島までのただの拠点間移動がバイクで往復するよりも楽になります。

今回は半年前に乗り始めたCRFがどこまで走るのか試すつもりでトランポなしで行ってみることにしました。

周南からフェリーに乗るのに高速なら自宅から港まで1時間少々。ところが予定よりも1時間以上早く目が覚めてしまったので、全部一般道移動にしてみました。

峠越えでは気温5度が続く10月としては異様に寒い朝。

牛丼を掘って卵を落とし、七味をたっぷりと載せて食べる吉野家の牛丼の味は、24時間営業の店なんて牛丼店しかなかった学生時代に夜中走り回って冷え切った体に沁みたあの味を思い出します。

7時20分の出航にはまだ早かったので海辺をうろうろ。港で朝日が昇ってきました。

もう時期的には寒いのでフェリー待ちのバイクなんてそう居ないだろうと思っていたのに、広島ナンバーのバイクが意外と少なくない。

みんなこの季節でも九州を走るのね。阿蘇は標高が高いので寒いけれど、みんなが阿蘇へ行くとは限らないものね。便数の少ないスオーナダフェリーなので、帰りのフェリーでも会えるかな。

乗船前、チケットを一時的に保持するのにこれまでのバイクではタンクキャップのキーシリンダーのリッドを使っていたけれど、CRFはビッグタンクにしてタンクキャップがねじ込み式になってしまったのでどこか良いクリップは‥と思ったら、あった。

ここなら従来のキーシリンダーのリッドよりもしっかり保持できて、引き抜くのも簡単です。

周南港といえば人間魚雷回天が屋外展示されているのを知りながら、九州への行き帰りでいつもすっかり忘れていて見落としてしまっていたので、先日これを見るためだけに船にも乗らないのにわざわざ港に立ち寄りました。

今見てみれば何のことはない、出航前の船のベンチから真正面に展示してあるのが見えていたのか。

2時間の船旅のうち、半分くらいは寝ていました。

「ガツン」と硬いものの上重たいものが落ちたような衝撃で目が覚めた。入港前、海は荒れていて、トイレへ歩いていくのにもまっすぐ歩けないくらい上下左右に揺すられる。

車両デッキのバイクが心配になってしまう。塩水をかぶってはいたが、無事でした。

大分県到着、といってもほとんど丸い形をした国東半島の北の先に到着するので、そこから内陸部へ向かうには半島を時計回り・反時計回り・真ん中の峠越え、と3通り選べます。

今回、大分空港のホバークラフトが復活したニュースを見ていたのでもしかしたら見られるかも、と一番遠回りの時計回りを選んでみました。

大分市から大分空港までは陸路だと別府湾の縁をぐるりと回って車で移動する必要があります。そこをホバークラフトを使った移送なら一直線、です。

ホバークラフトは普通に置いてありました。後で聞いた話では、導入はしたものの、まだ運航はしていないとのことです。

随分昔に初めてこの道を通った時、専用のS字通路をものすごい音を立てて先代のホバークラフトが走ってきたのを見たことがあります。日本では過去に何ヶ所かでみられたホバークラフトも今はここだけだそうです。あの迫力がよみがえるかと思うととても楽しみです。

記憶の中では緑一色の由布岳も山の上の方は紅葉が始まっていて、一気ににょきっと生えた山の山頂付近は見えない標高の壁を突き抜けているのがわかります。

湯布院を見下ろす狭霧台、のさらに上に展望所ができていました。見晴らしが狭霧台と大きく変わるかというと、そうでもない。

湯布院から阿蘇へはやまなみハイウェイが王道だけれど、ここ10年くらいはいろんな道を開拓して、それこそ枝道という枝道に入って良いアプローチ路を探していました。

今回は、一周回ってやまなみハイウェイに戻ってきました。ただ、全線そのままというわけではなくて、やまなみハイウェイと並走する林道も使ってみます。

ただ一般道のようにサービスの良い道ではないので、手前に案内の看板もなくいきなり通行止めのチェーンがかかっていたりします。

この道も抜けられなくて延々引き返すことになってしまいました。

長者原。「くじゅう」って九重?久住?どこが九重で何が久住なのかいつも迷ってしまう。そこで調べてみました。

玖珠郡に九重(ここのえ)町という地名がある。他に直入郡久住(くじゅう)町があったけれど、合併によって竹田市の行政区としての久住町になった。

ややこしいのが山の名前で、長者原から見えるこれらの連山のことを九重(くじゅう)連山と呼び、その中のひとつが久住(くじゅう)山。

近くにある九重“夢”大吊橋は「ここのえゆめおおつりはし」だそうで、もうネタにしてくれと言わんばかりの複雑さ。地図表記では混乱しないようにするためか、「くじゅう連山の久住山」というものもみうけられる。

九州最高峰、中岳(1791m)を抱えているだけあってか、紅葉が進んでいました。

牧ノ戸峠の展望台まで歩いてみます。駐車場から10分もかからない。

これだけ赤が挿していると、見知った風景も違ったものに感じられます。

初めてみる‥とか思ったら、16年前のブログを読み返してみるとどうももっと紅葉した風景をみていたらしい‥。

牧ノ戸峠を超えて阿蘇側へ。やまなみハイウェイ展望所から見る阿蘇山は、ここ数年で一番きれいに見えました。

お昼時なので、焼肉正へまっしぐら。前回カブで来たときは水曜日に来てしまって店休日だったので。

新メニューもできていたけれど、定番の赤牛丼。掘っても掘っても肉肉肉‥圧倒的に米が足りない。

柔らかいし美味しいんだけれど、年齢的にももういいかな。次は新メニューの焼肉丼にしよう。

天気の良いお昼、にしては春夏に比べて色の抜けたような箱石峠からの根子岳。ススキの穂が点々と、びっしりと山肌を覆っている様子が見えてとてもきれい。

何度かお世話になった楽園は、秋になっても相変わらず楽園。

ススキの穂は陽に透けると本当に美しい、って気が付いたのはいつだろう。真昼よりも朝夕の日が傾いた時間の方が太陽光を透かしてみえやすけれど、ススキを見上げる場所では昼でも穂が輝いてみえます。

横目にそんな光に透けた穂をチラ見しながら走れる道。って、このライダーさんたち、気が付いているかな。

買いたい。南阿蘇。

外輪山の外側からカルデラ内部へ1本道で続いて直接降りられる道が南阿蘇側には何本かあります。何年かかけてひとつずつ峠超えしてきたけれど、この道が最後になるはず。峠にはサイクリストの聖地、天空展望所があります。

ここを紹介している夏場に撮ったと思われる写真ほどは、この季節だと映えません。右奥のもこもこした山、

この山を「ラクダ山」という理由が、この日初めて分かりました。近くから見ても今ひとつなぜラクダなのかが分かりませんでした。

ここで軽トラに乗った野焼き動画を配信しているというおじさんが、いろいろこの地域について話をしてくれました。

その野焼きおじさんとの話の中で、今回立ち寄り目的地にしておきながら歩いて登るのが大変そうだったからスルーした上色見熊野座神社は「途中までバイクで行けますよ」と教えてくれました。

上り口の左にある細い道をバイクで登ると、延々と階段が続く山道を半分くらいショートカットできます。

階段を登った先のさらに先に、穿戸岩という風穴があります。

穴のこちらは針葉樹林で向こうの世界は紅葉している雑木林。穴が全く違う世界をつないで何とも言えない不思議な世界をつくっていました。

サクラミチ。一直線の両側に大量の桜の木が並んでいます。

根子岳をバックにした春の風景を想像してみます。平野部よりも少し標高が高いので、4月初旬頃にくれば良いのかな。

ここも前々から行ってみたかったトンデモスポット、清水滝。個性も何もなさそうな名前の滝に似合わず非常に濃ゆい場所です。無造作に作られた階段というか通路を降りていくと‥

頭に観音様を載せた象が迎えてくれます。妙に巨大なのだけれど、2階建ての建物の外側にモルタルで造形されていました。

坂の上からみたら先客が立って居るのかと思ったら、妙に胴が長いのでこれもオブジェだと分かります。近づいてみると三本指の右手にトラのベルトというかパンツ。微妙に内股なのが不気味カワユイ。

垂直の岩肌を彩るコケの緑、水面下に水平に広がる酸化鉄のオレンジがどちらも毒々しいく、これだけでもちょっと不気味に見えるのに、

メインの滝はそれほど水量があるわけではないのだけれど、岩の割れ目からたくさんの水が流れ出していて、富士山の白糸ノ滝状態になっています。

見どころがいろいろ振り切れていて、どこにフォーカスして良いのか迷ってしまう。

毒々しい。こうしてみると水量は常に一定量なのかな。

清水滝へ行かない方の分岐の道が阿蘇の中央へ向かって伸びていたので登ってみました。

最近作られたようなダイナミックな切り通しがありました。この先は残念ながら行き止まり。

また別の枝道に入ってみると、背の高さを越えるようなススキにて囲まれて路面も見えない状態で、Uターンするのも怖いくらい。ここは草の背丈の低い春にまた来よう。

阿蘇、地獄温泉の金龍の滝。ダイナミックな滝が2本。それぞれの滝がそれぞれに岩を削っていったのかな。長い歳月を感じる、良い滝です。

廃道になりかかっている、走ったことのない道から見る景色。

春や夏は若々しい緑の米塚も、ちょっとおばぁちゃんくさい緑になっている。

夕刻、太陽を背にしたススキの景色に出会うたびにバイクを停めてしまう。

16年前も確かにススキの原の中を走ったけれど、いちいちバイクを停めて見惚れるような風景ではありませんでした。

今、これに真正面から向かい合わずに通り過ぎるのは、ちょっと無理だなぁ。

もう少し歳を取ったら、また違った感じ方になるんだろうか。

春の阿蘇はどこもかしこも緑で、絶景に包まれる中を走る感じがします。秋はススキと光の当たり方との兼ね合いで、ハッとする風景が唐突に目に飛び込んでくる。

阿蘇は春だな、とか秋が絶景だなとか決めつける必要はありません。阿蘇はいつもどこかに驚くような風景を抱えているんだな。

内牧に宿泊すると町湯はいつも決まったところでお世話になるので、たまには別のお風呂に行ってみることにしました。町湯の中では一番熱いという七福温泉さんへ。

ところが無人の番台に投入できる小銭の持ち合わせがポケットに入っていませんでした。ちなみに200円。

仕方がないのですぐとなりの旅館、金時さんへ。ここお風呂は内牧で一番熱いらしい。

旅館の大浴場は2階分の吹き抜けの大空間で、源泉に近い方から熱い浴槽→少し熱い浴槽→ぬるい浴槽へと順次お湯が流れ込んでいくつくりになっています。熱い浴槽は、強烈に熱い。ガツンと熱くて目が覚める。500円。

昼過ぎに阿蘇入りした割には南阿蘇のまだ訪れたことのなかった場所を巡る1日で、濃い日でした。翌朝は車の窓が凍る気温だとか脅されながら、ゆっくりと就寝しました。

2 Comments

上月 ゆかり

はじめまして。
以前、あのススキのあまりの美しさに暫く時を忘れた1人です。
沈む夕日と街のあかりと、すぐ上を飛行機が…。
同じ思いの方がいらっしゃる事に嬉しくてついコメントしてしまいました。

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tsugataku

>上月さん
コメントありがとうございます。
ススキが光っているわけじゃないのはわかっていても、ホワホワと光るススキがあれだけ目の前に広がっていると、それは時を忘れてしまいますね。
僕も割と低いところを飛ぶ飛行機を何機か見ました。西からの風の場合阿蘇の上あたりから熊本空港へアプローチするのだと思います。いろんなタイミングが整うことで、良い体験になりましたね!

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