宮島 鷹ノ巣砲台跡

昨年と同じように3月に宮島で野宿スタート‥と思っていたのに、天気予報では最低気温0度だとか。泊まって泊まれないことはないけれど無理するものでもあるまいと宿泊はあきらめて、ちょっと前から気になっていた宮島の鷹ノ巣砲台跡を見に行くことにしました。お昼の12時過ぎに家を出発。

JRフェリーから社殿と鳥居をほぼ真正面から捉えてみました。

包ヶ浦海水浴場の先、普段野宿をしている場所へ向かう道の峠付近に元軍道の林道があるのは知っていたのですが、以前野宿する荷物満載で入って行ったらちょっと無理っぽかった覚えが‥そのときはGROMだったのかな。今日は軽装のセローなので、構えることなく突っ込んでみます。

もっと凸凹していたように思っていた記憶と違ってフラットでとても走りやすい路面。車で走れなくはないですが、一部道幅が狭くなって結構太い木の枝が垂れている箇所があるので、ハイエースなどの背の高い車だとちょっと厳しい道です。

ちょっとひらけたところに「海軍省」の石柱。宮島の対岸の能美島の砲台跡には陸軍省の石柱が立っていたんですけどね。

バイクで数分走ると少しひらけたところに到着。井戸が目印。

その近くにこれ。トイレ跡。

なんの規制もなく砲台跡まで道が続いています。

弾室などはとても綺麗に残っています。

山頂の観測所から海峡を航行する敵船を監視して、敵船から見えない稜線の裏側から砲撃をするという28cm榴弾砲が2門並んでいる砲座が3箇所。全部で6門の砲台の跡です。

地下になっている弾薬庫は、何箇所かありましたがいずれも破壊されたか崩れたかで埋もれていました。

伝声管?空気の流れは感じませんでしたので、中は塞がってるのかな。

レンガの崩れたすぐ裏側が岩の地肌になっています。ここは岩を大雑把に整形して、そこをレンガで覆って弾室の形を整えたようです。

そうかと思えばギッシリとレンガの詰まったブロックも。

日本のコンクリート建築は明治時代にスタートしたそうで、おそらくこの鷹ノ巣砲台跡ができた時代では最新工法に近い技術だったと思われます。レンガや石積みで行なっていた建築から、曲線的な構造でも型に流し込むことで自由に造形できるコンクリートを使用した工法に変わった時の感激って、今で言ったら8ビットファミコンの世界から4Kテレビ の解像度なめらかさに震えるのに通じるものがあるのかしら。

石積みの曲面w 広島湾の明治期の砲台跡はコンクリートを使っていても石積みやレンガ造りとのハイブリッドなところが多いです。

前夜は雨だったんですよね。おかげでいい風景。

観測所跡は砲台跡から少し離れた海を見下ろす山頂にあるので、結構な階段を登ることになります。

とても綺麗な状態といってよいのではないでしょうか。驚きました。

観測所へ続く階段。

木が生えていなければ海がとても綺麗にみえるところです。

地下の掩蔽部。

掩蔽部の内部。

複雑な作りをしています。ラピュタがこういう遺構を真似て作ったんでしょうが、こういう遺構がラピュタに見えてしまいます。

さらに高台へ続く階段を登ってみると、また何かありました。

石組みの観測所か指揮所です。

その少し下ったところに倉庫?

棚でもあったのでしょうか、木製のフレームが残っています。

なにをするためなのか、埋め込みのフックが並んでいました。

新しい切り口。ここへ登ってくる途中、十数人のおじいさん方が手に手に清掃用具や草刈機を持って降りてこられていたので、ここはちゃんと人の手が入って整備をされ続けているようです。とはいっても、一般の人が簡単に来られるところではありませんので、観光のためというよりは本当にここを綺麗に保って維持するための整備の様子。僕らがズカズカ入ってきて荒らさないようにしなくちゃいけませんね。

それもあるので、今回は各遺構の場所を地図で案内するのは控えます。調べればすぐに分かることでもありますし。

少し先が本当の山頂のようでした。


山を下って海沿いの道を走ると、「鷹ノ巣浦」と書かれた枝道が見つかります。GROMではそれまで何度も何度も走ってきた道なのに、セローに乗るまでこの枝道に気がつきませんでした。初めてこの道を見つけたときに分入って海岸まで出てみて、そこに何かの遺構があることまでは確認していました。それが鷹ノ巣低砲台跡と知ったのはつい最近のことです。

ここは結構荒れています。上の鷹ノ巣高砲台跡がとても綺麗に残っているのと比べると対照的です。

海の侵食で崩れた、というよりも「あえて使い物にできなくした」感が強く、もしかすると戦後米軍が破壊したのではないか、という話もあるところです。

浜へ降りていく道があるわけではありませんが、鹿のつくった獣道がなんとなく足場になる道のようになっています。

ここ、牡蠣殻の廃棄場になっているので、おびただしい量の牡蠣殻の山。誤って転んで手でもついてしまったら流血必至の大惨事。

何もかも、斜めになっています。

ここは9㎝速射加濃砲 1砲座2門×2箇所と27㎝加濃砲 1砲座1門×4箇所の全8門があったとのこと。これは大きい台座なので27cm加濃砲の方かな。

海の水はとても綺麗なんですよ。

それだけになんだか哀愁の漂い方もより強調されてる感じ。

煙突のある構造物も。兵舎でしょうか。初めてきた時は満ち潮で全容が全くつかめませんでしたが、この日はほぼ引き潮状態だったので全体の様子がよく分かりました。牡蠣殻のせいか、独特の磯臭さに満ちていて、10分ほどで小さな虫が自分の周りをブンブン飛び始めるので長居はしづらいです。夏場なんかだともっと大変かもしれません。


セローで走るとそれまで気づかなかった林道が目に入ってくるのと同じように、砲台跡などの遺構を意識するようになるとそれまで全く気にならなかったものが「もしかして?」と気になるようになります。いつも通り過ぎていたレンガの被造物、これもしかして‥?

バイクを寄せて上から覗いてみると、丸い穴。観測所跡っぽい遺構でした。


もう少し進むと道沿いに、これはどう見てもソレでしょうと思うような跡があります。鷹の巣低砲台探照灯跡です。

半地下の部屋のような空間。

上の方の丸く開いた部分と下の部屋が繋がっているのですが、探照灯をどのように設置したのかはさっぱりわかりません。

ちなみにここにはジオキャッシュがひとつあります。


いつも野宿するところ。翌朝零度とかいう予報だし、流石に誰も居ませんでした。

少し戻って、海にせり出した高台にセローを停めて、ちょっとたっぷり目にコーヒーを淹れました。

いつもなにか慌ただしく考えたり動いたりしているので、このときくらいは雲の流れていくのを眺めてのんびりしてやろうという魂胆。

のんびりいただきます。コーヒー多めに淹れておいて良かった。

沖を自衛艦が4隻、のんびりと往くのをのんびりと眺めるだけの時間。

港からJR宮島口駅を正面から見ていて気がついたのですが、何気に駅舎って宮島の大鳥居を意識したデザインになっていたんですね‥気がつかなかった。

自宅に帰宅したのが16時過ぎ。4時間少々でこんなに充実した気分になる空間があるとは思いませんでした。ジオキャッシュ、設置するべきなんでしょうか‥ちょっと悩むなー。

3 Comments

nori

こんな所があるんですね!
写真と解説で充分行った気になれました。
次回、期待します。

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tsugataku

>nori君
瀬戸内海も九州あたりも、結構多くの戦争の遺構が残っているけれど、勉強不足で近くを通っても知らなかったり気づかなかったりすることがよくあります。足腰動いて巡れるうちに巡っておきたいな、と思います。

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