
気がつけば今年はこれまで、2月・3月・4月と月イチで秋吉台に訪れてきました。
秋吉台は秋芳洞をはじめ大正洞・景清洞などそれぞれに個性の光る鍾乳洞を抱えながらも、バイクで走るだけだと「南から北へカルストロードを抜けたら5分でおわり」の場所だとこれまで思っていました。せっかく来たんだからと大正洞の駐車場でぶらぶら暇を潰すことが主な過ごし方になってしまうライダーさんも少なくありません。
しかし秋吉台はその内側で楽しむのではなく、大草原エリアの外側から内側へ向かってアプローチしてみると、これまで知らなかった、驚くほど広くて奥行きのある景色が、訪れるたびに顔を変えて現れます。正直、毎月毎月度肝を抜かれています。
また同じ場所を冬から春かけて定点で追っていくと、荒涼とした風景が楽園のように変わっていく姿に目を奪われることになります。次はどうなっているだろうという思いに惹かれて、ついつい秋吉台へと自然と引き寄せられてしまうのです。
というわけで、春の一番良い季節の景色に期待して、今回はあやのすけさんを誘って秋吉台巡りスタート。

はい。もう、ここで、お腹いっぱい。
どこまでも続く緑の原。濃さを増した草の緑が、石灰岩の白を際立ちます。そのコントラストが、遠くの稜線のさらに向こうまで続いている。
ここは秋吉台を十文字に切り分けたとしたら、右下のブロック。

ひとりで訪れると写真を撮って、数分空気を吸い、次へと向かってしまいがち。でも今回は「ここで夕方まで過ごすことになってもそれはこの上なく贅沢で良いんじゃない?」と思って、じっくり腰を据えるためにコーヒーセットを持ってきました。

いつもの味のコーヒーをいつもの手順で淹れられるように、デジタルスケールまで持ってきました。コーヒーなんて買ってくれば済むものを、こんな景色の中で時間をかけながら段取っている手間暇そのものが贅沢です。

格別な景色と一緒にいつもの味を、いただきます。
鳥のさえずり、温かい日差しと涼しい風。まだ虫もいないし、これ以上望みようがない快適な時間。

赤色にも見える耕作地とのコントラストがたまらない。というのも、

2ヶ月前(のブログ記事)に、
「周囲一帯が緑になったらまたさぞ綺麗でしょうね。春に再訪だな、春。」
って書いていました。本当に信じられないくらい綺麗になったよ。

あやのすけさんが、ズルった。
「ガソリン漏れてる!」とインカムに緊急事態を告げる声。

サイドスタンドが立ちにくい場所だったので、CRFをイゴイゴしている間も惜しんで、バイクを寝かせて助けに行きましたよ。
701を起こすのを手伝って戻ってきたら、CRFのタンクキャップからガソリン漏れてた。

ジェネリック阿蘇。
ちなみにこれまでも今回も、草原には車の轍があるところ以外立ち入っていません。


上、2ヶ月前。まるで別世界。
どちらかというと、下はよくみる秋吉台の景色だけれど、上の野焼き後の黒焦げが少し落ち着いた世界の方が珍しさの中に魅力を感じる、ちょっと違った側面の秋吉台の姿に思います。

長者ヶ森にも入ってみる。

この森の中は先月からの違いってあんまりないな。

ジェネリック阿蘇も先月に比べてはるかに阿蘇のイメージに近くなりました。
こういう大きく左から右にシンプルな一本線でできた景色というのが、海以外では陸上でなかな出会えません。秋吉台はそんな単純なラインの景色の中を走り回ることができます。

森のダートを走っていると、前日の雨で水を含んだ落ち葉の谷に踏み込んでしまいました。急傾斜なのでブレーキをかけてもタイヤの回転方向を無視して車体がそのまま谷へ落ちていく。
谷から脱出しようにも、701ではパワーがありすぎて地面を掻き上げまくってしまいます。

701のリアタイヤ。こりゃ食わんわ。

CRFも。よくこれで坂道登ったな。着座では登れないのでバイクを押しながらなんとか乗り越えることができました。
390で来ていたら詰んでたかも。ひとりで来ても詰んでたな。

ここは秋吉台を十文字に切り分けたとしたら、右上のブロック。
丸い穴は、雨水が石灰岩を溶食してできた凹みのドリーネです。
ドリーネについて、昔なにかで「ドリーネの底には数十メートルにもなる地下へ繋がる穴があることがあり、落ちると這い出ることはできない」と読んだことがあって、僕にとっては恐怖の対象でした。
このあたりでいくつもみることができるドリーネはただの軽いすり鉢状の土地で、底には草が生い茂ったり畑になっていたりと、平和でその形状から可愛いと感じるものばかり。
基本的にどこも傾斜地になっている秋吉台であるけれど、あちらこちらにあるドリーネだけは大小様々な正円の水平面になっています。

水平な事を利用して、畑として利用されているところもある。

カルスト台地の谷を進む。丘のはるか上の方にカルストロードが見えます。

緑と白のカルストの山に囲まれた谷。どちらを見てもダイナミックで、あまりにも綺麗で、語彙力を失った口から「すごい」と何度漏れたことか。

椅子を出してくつろぎましょう、と軽く食事タイム。もうここでタイムリミットまで過ごしても良い。
椅子を出してしまうと畳むのが面倒くさいので、しばらくそこに時間をかけて滞在することになる、ということがわかりました。

でも、じっとしていられない性分なので、周辺を歩いて散策。
本当はこの道の上の展望所へこの丘の向こう側から歩いて来よう思っていたのだけれど、あやのすけさんが腰を痛めてしまったのでそれでは長時間歩くのを控えて別の場所でも‥とうろうろしていたらたまたまこの谷を見つけました。
正直言って上から見る景色よりもここで緑に囲まれる方が体験としても面白い。こんな素敵な場所が見つかるなんて、あやのすけさんには悪いが文字通りの怪我の功名です。

どっちを向いても圧倒的な分厚さの緑。これは写真じゃ伝わらないだろうなぁ。

バイク小さすぎ問題。

まんまるのドリーネへ道が続いています。

別の場所ではドリーネが植林されていました。

これはカルストロードの「帰り水駐車場」からの景色。先ほど居たあたりを上から見下ろしています。地形に着目しないと普段は石灰岩の散らばるスケールの大きな丘にしか目が向きません。
谷底にはいくつかのドリーネやドリーネがつながってできたウバーレが階段状に連なっているのが見られます。そして一番低いドリーネでは周囲からたまった水が地面へ染み込んで地下へ戻っていく。ここのことからこの辺りを「帰り水」と呼ぶことになりました。
谷でその地形を近くから観察したあとで上から眺めることになったので、その地形の特殊さが非常につかみやすいです。これまではここから見える石灰岩と緑の丘を見て「羊さんみた〜い」とかいう思い出しか残らないような場所だったのに。

ほら、ドリーネとウバーレだらけ。画面右下あたりが帰り水のドリーネ。

ここは秋吉台を十文字に切り分けたとしたら、左上のブロック。
2ヶ月前、野焼きされた後のどこまでも広がる荒廃した風景に口がぽかーんとなったのとはまた違った景色に口がぽかーんとなります。これも写真では全く伝わらないだろうけれど、正面の壁面はものすごく巨大で、この谷も深く、黄緑に染まってたっぷりとしたボリュームのある空間の景色に圧倒される場所です。

稜線の向こうに見える景色を想像しながら一本道を歩いて20分、想像を超えるスケールのどこまでも広がるカルスト台地が眼前に開けました。
全く、勘弁してほしい。驚きと感動に浸れる景色だ。
秋吉台なんて50年も前から訪れている場所だというのに、これまで自分は何をみてきたのか。なにが「バイクで走ってしまうと南から北へカルストロードを抜けたら5分でおわり」だ。
今日は秋吉台の印象がひっくり帰りまくっています。もともとは最初の丘でパンチを一発くらって帰ることになるだろうと思っていたのに、予想外に特大パンチを三発もくらってしまいました。

このあたりのドリーネは、牧歌的な平和さを感じるそれとは違ってかなり鋭角の深い穴になっています。周囲は柵に囲まれ、「近づくな危険」と警告の看板まで立っている。恐る恐る縁から覗き込むと5mほどの底には、さらにどこまで続いているのかわからない黒い穴が開いています。あんなところに落ち込んだら正直どうにもしようがないかもしれない。
やっぱり怖い、ドリーネ。

ここは秋吉台を十文字に切り分けたとしたら、左下のブロック、の外側。
地図を眺めていたら、その地形から美祢の石灰岩の露天掘りの非金属鉱山が見えるんじゃないかと訪れてみました。想像以上にばっちりとその様子がうかがえました。写真に写っているのは一部分で、かなり大規模に山を削り取っています。

近くにある弁天池という抜群の透明度を誇る青い湧水が有名だけれど、こちらはその近くの白水の池。
少し白濁した水を湛えていることから白水の池と呼ばれています。幻想的な色をした池の中央に小島がある。

小島へは、おそらく昔は橋がったのではないかと思う。今のアプローチ路はこれ。

あやのすけさん、勇気あるなぁ。

とても幻想的。桜と紅葉の木が生えた小島なので、季節を選べば緑一色じゃない楽しみ方もできそうです。

周囲から地下に取り込まれた水がここで湧いているとのこと。ここから流れ出ている水の量から鑑みるとかなりの勢いで水が湧いているといえます。

バイクを積み込んで、軽く食事でも。このあたり、ゴボウが特産なのかな。山歩きして汗をかいたからね、ゴボウうどんのスープが沁みた‥。
もう、多くを語る必要はないだろう。日帰り圏内でこんなスケールの大きな別世界感に浸れる場所があるなんて、驚き半分、これまで知らなかったことへの後悔半分です。春から初夏にかけての晴れの日は、秋吉台へ何もせずにただただ時間を溶かしに行く、というのはアリだなぁ。真夏はダメだろうな、日陰がなさすぎて。
側面とか裏面から世の中を覗いていくのは、とても面白い。発見や驚きが次の行動への内的動機に繋がります。



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