CRF250L 濃密に長崎を巡る 1日目

昨年の3月末、鹿児島まで行って帰ってくる2泊3日のハンモック泊ツーリングでは、朝晩それなりに寒くても日中は非常に快適で、3月でも屋外泊ツーリングできるもんだなと味をシメてしまったので、今年は昨年以上に軽装で長崎を狙います。

今年は4泊5日してやろうと4連休の前夜に広島を出発して佐賀泊、翌朝の早朝スタート。出発時の気温は0度で寒いけれど、まぁ冬を超えてきて寒さには慣れているし、それ相応の装備も整えているので、九州を走っているという高揚感もあって全く問題ありません。

佐賀県といえば僕の中の聖地は国道34号線沿いの井出ちゃんぽん本店。何度かお世話になりました。

鍋島焼の窯の集まる伊万里大川内山の集落、通過点に‥と軽く考えていたら、歴史を感じるただならぬ雰囲気、無視できない風情です。街中をうろうろしてみました。調べてみると20以上の窯元があるところで、あちらこちらに煙突が建っています。

関所跡。

ひと山超えると正面に佐賀県と長崎県の県境になる稜線のある山、そこへ大きくジグザグしながら集落の中を登っていく道‥気温も上がってきてもう、たどり着く前からウキウキしてしまう。

昨年の秋のツーリングで、九州北部の炭坑跡の面白さについて教えてもらってそれらについて調べていたら、ついでに佐世保の周辺の石器時代から残る洞窟について知ることになりました。それならばまとめてそれらを巡ってみようと思い立ったのが今回のツーリングへ出かけるきっかけになっています。

ここは旧石器時代の遺跡としては初めて国の特別史跡に指定されたという福井洞窟。洞窟というには狭いなと思ったら、もともとは今写真を撮るために立っている位置よりも低いところがグランドラインで、地滑りによる土砂の流入によって床面が上がってしまったのが現在の状態とのこと。

この洞窟周辺の地面を下に下にと掘り下げていくと、歴史年表のように旧石器時代からつづく遺物が層になって出土してきたそうです。時代を串刺しできるタイムカプセルだな。

案内板をみると、事前に調べた以上に佐世保の北部にはたくさんの洞窟が点在しています。これはこれは‥自分のグーグルマップに気になる洞窟を転記。

ちょうど福井洞窟ミュージアムの開館時間になったので入館してみました。ジオラマにプロジェクタで映像を重ねて、洞窟周辺の現代までの時間の流れを再現していました。

石器時代の刃物、黒曜石って実際どんなもんなんだろう、って以前から思っていたのですが、ここでは各地の黒曜石とその活用方法について学ぶことができました。

単に刃物として使うだけでなく、骨や角に埋め込んで鏃を強化するために使っていたり、昔の人の工夫って面白い。

ミュージアム近くの橋川内洞窟遺跡。遺物の豊富さから福井洞窟の方が圧倒的にクローズアップされているけれど、訪れた満足感はこちらの方が数倍大きい。

こちらは生活できそうな空間が広がっていました。

自分の力で家を建てるという発想がなかった人類が、雨風を凌ぐためにこういう空間を利用してしまう、っていうのは、木のウロや洞窟に済む野生動物に近い。洞窟は当時の人にとってとてもありがたいものだったのでしょう。

また、こういう堅牢な空間のおかげで当時の生活が偲ばれる遺構の数々を現代になっても見つけることができるという点で、自然洞窟というのは昔だけでなく今でも大変ありがたいものです。

西へ西へと進んで、やっと海に辿り着きました。

ここまでくるのに、CRFのエンジンの回りっぷりには本当に驚かされました。グイグイと前へ出る。セローのように中低速のトルクで押し出されるという感じではなく、モーターのように回って一気にパワーバンドから伸び上がる感じ。

線は相変わらず細いのだけれど、細くて弱々しい線ではなく、細いくせに強度があって頼り甲斐のある線、といった感じ。時間はかかったけれど、面白いバイクが出来上がってきました。

2025年、この手のデュアルパーパスのバイクで400ccクラスの新型マシンが賑わっていますが、プラス10kgの車重を受け入れて排気量の大きなマシンに乗り換えるか、CRFの軽さを活かしてヒラヒラ走るのを取るのかは、正直悩みどころです。

今回のツーリングを通して、今のこのパワー感なら乗り換えを考えなくても良いかな、と傾き始めています。バイクが軽いのは何にも増して大切。

犬も歩けば、じゃないですけれど、走っていると教会にあたるのは長崎の特徴のひとつ。

判を押したようなものではなく、教会ごとに建物に個性があるので、それらを見比べるのも楽しくてつい立ち寄ってしまいます。

展望所と名前がついているところも、ついつい足を運んでしまいますね。

佐世保あたりの九十九島はここからは見えませんが、陸地の一部がバラけて海に散らばっているような島々がつくる複雑な海岸線を見渡すことができます。

こちらも。対岸の大きな陸地はなんだろ、ああ、平戸島ですね。

通りすがりにある教会。

このあたりの教会に共通しているのは、建物が古くても新しくても、周囲にゴミひとつ落ちていなくてこざっぱりしていというところですね。ああ、森の中にある神社や佛舎との違いはそこかも。長崎の教会はよく言えば都会的、よくなくいえば周囲の環境を含めて人為的に造られた特別な空間、という点。

地図を見ると、ここは際どいところで本土最西端を勝ち取っていますね。

ここより平戸島、離島だと五島の方がよほど西にあるのに、ついつい条件付きの「西端」とか言っちゃうところ、気持ちは分かりますよ。山口県にも「本州最西端」とかありますし。そこへ僕らもついつい足を運んじゃいますし。

地面に直接影が落ちているんじゃないかと思ってしまうくらい海の水が綺麗です。西端ということよりもこういう点を誇りに思って良いと思う。

今回は洞窟と炭鉱跡を巡るのを目的に始まったツーリングなのですが、ジオキャッシング関係ではアースキャッシュとアドベンチャーラボを巡ることを目的にしています。

アースキャッシュとは、現地の地理地形や地質に関する面白ポイントをテーマにした質問に対して、その様子を自分の目で観察して回答するタイプのジオキャッシュ。

アドベンチャーラボは、その地域に数カ所用意されたポイントに近づくと質問がアクティベートされて、ポイント近辺の情報を集めて回答しながらコンプリートを目指すもの。

いずれも観光ガイドには載っていないようなその地域が持つ独特な面白さに気づき、巡り歩くことで自然と深掘りできるのです。

通常のコンテナを探すジオキャッシングでは、コンテナが見つかるまで現地をうろうろすることになりますが、アースキャッシュやアドベンチャーラボは現地を自分の目で見て感じるところに重きを置いているので時間的に拘束されることも少なく、観光要素が強い点もツーリング向き。

この小さな島はグーグルマップにも紹介されていませんが、トンボロ現象で干潮時に渡ることのできる島で、種類の違う岩石層が侵食を受けて素晴らしい模様を作り出しています。キャッシュ名は「Art of Geology」。

下層の硬い岩に対して、上層は有機的に削られて、岩の中の堆積層が木星の表面のような綺麗な紋様を見せています。

堆積層の向きにお構いなく侵食を受けて削られて行った結果、バームクーヘンを斜めカットしたみたいになっています。

いや、とても綺麗。

蜂の巣のようなタフォニのできた泥岩と砂岩が癒着しているものも。

板状に剥がれる節理が斜めに入って表面を侵食された岩肌、これができるまでの時間とか考えていると、僕たちの人生って本当に一瞬の短さだなと思わされます。おそらくこの岩が自然に1cm削られて角が丸くなる時間よりも短い。

近くの姫神社。海から神様を迎えるための鳥居かな。

お隣ににも違う名前の神社があって、海に向かってお迎えの準備をしています。

派手さのない食堂のちゃんぽんが滋味深い‥長崎ツーリングは昼ごはんにちゃんぽん食をべていたら、野菜不足にはならないな。

眼鏡岩っていうから覗いてみたら、本当に眼鏡岩。

なにやら掘り込んで立体落書きをされている。

佐世保北部の岩下洞穴遺跡。これまでに見てきた洞窟は川の侵食なのかなという地形だったけれど、ここは山の斜面の中腹なのでどうやってできたのか分からない。

調べてみると侵食によるものだとは書いてありました。ここも僕には想像ができないくらいの時間を費やした結果の姿をたまたま見せてもらっているだけなのか。

縄文人の人骨29体と埋葬物がでてきたそうで、その時代の人間の目にとまって利用されるされるべくして利用された場所のようです。

この岩山、割れた大岩が組み合わさってできた穴に階段が続いていました。

スターウォーズ Ep.8/最後のジェダイでルークが住んでいた岩山のセットみたいな場所。

雨風凌げるし、自分もテントとか持ってなかったら住むな、とか考えてしまった。

泉福寺洞窟。トレイルを歩いてくると出会える、縄文時代草創期の土器が出土した洞窟。

縄文時代から現代まで、人々が出土品を興味本位で荒らさず遺してくれていたというのが良いですね。ここも住めそうな規模の洞窟でした。

洞窟つながりで番外編なのですが、無窮洞。人工の洞窟、というか防空壕です。

戦争時代、小学生を含む子供を動員して掘られました。全校生徒600人を収容できる広さがあるとのこと。

「昭和18年8月29日に作業をはじめて、炊事場を未完成のまま20年8月15日に作業を止めた。一切の外部からの労力を得ず、爆薬を用いず、職員生徒児童の手によりつるはし、のみ、かなづち、くわを使用して掘った」といったことが書いてあります。

中は思ったより広く、天井高があることが余計に広さを感じます。ここは講堂のようです。

これでコツコツと‥数は力だな。

教壇や棚は後付けではなく、岩からの削り出しで床や壁と一体化しています。

床の模様は出口側に傾斜をつけた水抜きのようです。

削り出しの棚。増設し放題だな。

未完成という炊事場も、2基のかまどはできていました。

かまどの向こう側の黄色い電球のところは、

超急階段の避難口兼通気口。これを上からと下から掘っていき、繋がったときには子供達が大変喜んだ、とありました。

一時期、水不足のためこの洞窟を貯水場として使用していた時期があり、その際便所の入り口はコンクリートで塞がれたようです。

収容人数600人というのは少々ぎゅーぎゅー詰めな感じもするけれど、一時的になら無理でもない広さです。

今回の洞窟巡りの中では、ここが一番衝撃的だったかな。

それにしても1日が長い‥。

針尾に来ました。針尾といえばハウステンボスよりも針尾送信所。

近づくと、塔が高すぎて写真に収めるのが大変。思っている以上に後退りしないと画面に収まりません。

このあたり、針尾送信所があるからといってそれを特別視しているわけでもなく、この畑の中にズドンと立っている姿がとてもシュールで好き。

しばらく走って離れてみても、なお放たれる存在感。巨大すぎて遠くからでも視認できてしまうこの塔の異様さは、近くで見るよりも遠くから見ることでより強く感じられるのかもしれない。

若い頃何も知らずにこの辺りを走っていて視界に入ってきた時の不気味さは今でも忘れられません。

この日、針尾にあるライダーハウスに泊まりました。ここは民宿も経営しているのですが、素泊まりのライダーはトレーラーハウスに泊まることができます。

意外と広い内部。この日は貸切だそうです。

宿にチェックインしたので、もう少し明るいうちに走ることにしました。

橋を渡って近くの寺島へ。

寺島の海岸線にあるこれ、斜めに岩と岩の境界線ができています。左側は5000万年前、右側は9000万年前の地層で、隣接しているのに4000万年も時代にずれが生じています。このように連続性のない時代の地層がくっついているものを不整合と呼ぶそうです。

なぜこのような現象が起きたの。、周囲の地質図などを頼りに考えるというアースキャッシュ。堆積岩と火成岩が接合しているのが回答のポイント。

砂岩や花崗岩礫岩の他にも泥岩や礫岩も転がっています。アースキャッシュを楽しみ始める前は岩や石に対してなんとも思わなかったけれど、地質や歴史に目が向き始めると、こういう素性の違う岩石がごちゃ混ぜになっている景色はなんだこりゃ!?ってなります。

それぞれ別々の場所で何万年単位の時間をかけてつくられたものが、石に足が生えているわけでもないのに一堂に介しているわけですよ。なんだこりゃ!?ですよ。

この辺りの人、この風景が当たり前なんだろうな。初めてみた時も異様だなと思ったけれど、今見ても十分異様だな。

宿のトレーラーハウスをネコバス仕様にペイントして以来、トトログッズをもらったりするようになったそうですが、洗面所にあるコレは番組違いです。

長く濃い1日だった‥日の出スタートで家に帰らず現地の宿泊だとひたすら走り回っていられるので、小規模イベントを積み重ねていくと1日の密度が半端無い。

でも、このツーリングのメインは、今日ではなく翌日なのですよ。

→2日目につづく

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