CRF250L 林道と山の工房

通行止めが続いていた県道71号広島湯来線がついに4月1日の開通日を迎えました。僕のツーリング圏の中でもとても使い勝手がよく重要な道のひとつなので、この開通を心待ちにしていました。

補修箇所を見ると、つづら折れで標高を上げていくこの箇所で道4本を串刺しするように土砂崩れが起きていたようで、開通まで時間がかかったのはこれが原因だったのでしょうか。

峠の向こう側の標高の高くない位置にトンネルを掘る準備もしていたので、ゆくゆくはこのワインディングの峠越え道も旧道化するのでしょう。

県道71号線に抜けてくる道で、昔何度か走った事のある林道があったよなぁ、とその道がまだ生きているかを確かめに行ってみました。山側が5kmのダート、低地は2kmほどの舗装林道でリバースせずに抜けられました。

通行止めの期間中も林業で使われていたようでしっかりと踏み締められた道が生きていました。近場では走り応えのある林道がないので、これはとてもありがたいです。

大規模なゴミの最終処分場が新しく作られていたのも、この道が死なずにいた理由かもしれません。

この後、3月初旬に雪で抜けられなかった林道にも入ってみました。こちらも長くて折り返しせず抜けられる林道でした。今日はロングダートの発見が豊作。

オートバイの楽しさって車よりもやや緊張して走る必要があるところにあると思っているのですが、オンロードに比べたオフロードの楽しさはその緊張をさらにギュっと凝縮させた状態で走り続けるところにあるんじゃないかと思っています。脳が活性化した状態を維持し続ける感じ?気が緩むと崖下に落ちるからね。

山の中に、陶芸工房とカフェが一緒になったお店を見つけたので寄ってみました。

「土の子窯 山田屋 ギャラリーカフェやまだや」とあります。

朝早いからか、扉は閉まっていました。

中がどうなっているのか覗いていると、お年寄りが出てきて開けてくれました。予約制のお店なのですが、作品は見せていただけるとのこと。

展示の仕方が、素敵。

写真を撮っても良いということでしたので、ご迷惑にならない程度にご紹介。

窯を併設してあって、こちらで作品を焼いていらっしゃいます。陶器だけかと思ったら、壁には軸物がかかっています。

売り物なので大きな写真でご紹介しづらいのですが、全て布で描かれた布絵の言葉の選び方がコミカルでシニカルでユニーク、とても上手なのです。

陶芸作品も、地味で僕好み。でもこういうものは、本当にコレと思う物じゃなければ手を出しません。自分が本当に使いたいものを買いたいじゃないですか‥って思っていたのに、思わず手を出してしまいそうな腕が2つありました。

テキスタイル商品も古布を継いで作ったような作品が味わい深い。

品よくハキハキと案内してくださったおばあさん、ここではお名前を伺いませんでしたが家に帰って調べたら岡上多寿子さんという陶芸・絵画・テキスタイル作家さんで、なんとこれら全てお一人でつくられたものでした。

この家は岡上さんの生家で、改装してアトリエ兼工房兼ギャラリー兼店舗としているとのこと。

最近クラウドファンディングに成功してカフェを作ったこのスペース、もとは牛舎だそうです。

中に飾られている絵画や布絵作品だけでなく、椅子のカバーも手作りの作品。ついつい話し込んでしまっていたら、「コーヒーでも飲んで行かれますか?お代は頂戴するけど」ということでコーヒーを出していただきました。

コーヒーカップも湯呑みも作品。コースターも作品。

季節感のあるお団子。このコーヒーセットで400円。

基本的に予約制で、手間のかかっていそうな見た目にも美しい季節のお料理を1500円で提供されています。

全て布なのですが、これとか「下絵をまず紙に描くのですか?」と尋ねてみると、直接布を切って縫い付けて作るとのこと。

「下絵がうまく描けてそれを作品していやろうとか考えると、下心が働いてもう元の絵とは違ったものになってしまうでしょ」

これは、作品づくりの核心を突いた言葉でドキっとしました。確かに、シュっと引くことで生まれた生きた線でできた下書きをいざ本画にしようと思ったときに、そのシュっとした生きた線を再現することに気持ちが向いた時点で、もともとのモチーフを直感的に捉えて引いた線とは違ったものを描いていることになる。このおばあさん、信用できる人だ。

「だから、早いのよ」

見せていただいた作品とその制作時間を伺うと、ものすごく手が早い。絵の具じゃないから調合したり乾燥させたりという時間がない、としても作品の大きさに対して制作時間はかなり短い。直感的・感覚的に、次々と作品を生み出していくようです。

この暖簾ももちろん作品。薄いガーゼ状の生地に布の魚を縫い付けていくのに、糸の引きが強いと生地が撚れてしまいます。そうならないようにひと刺しひと刺し丁寧に仕事をしている様子が伺えます。

すごいおばあさんだった。

随分制作のペースが落ちてきたと言われていて、僕の年でもそう思いますと言うと「失礼ですけれどあなたおいくつ?あら、まだ青二歳」と言われてしまいました。ずけずけと嫌味のない言い方で言いたいことを言う感じ。

「あなたも頑張ってね。好きなことをして生きていくのは楽しいわよ」とお別れの言葉。

ものすごい刺激を受けました。言葉では感謝の気持ちを表しきれないくらいの、とても貴重な時間でした。

帰りがけにもう一人のスーパーおばあちゃん、すぅちゃんのところへ。

安定安心のただ一つしかないメニュー。バリエーション、必要ないです。これでいいです。

先週のブックマンといい、今回の山田屋さんといい、新しく古い家に飛び込んでいくのは、そこで何か仕掛けてやろうという人の発見があって面白いな。こうして素敵なお店や人を見つけていくのは良いのだけれど、あそこも行きたいここも行きたいとなるとそれぞれが薄くなっちゃうのが問題。

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