パフォーマンスアート&陸軍墓地

職場に個展のDMが束で20枚届きました。個展のDMが届くのも珍しいのですが内容が「‥やがて美術教育に課題意識を持つようになる。本展では、自身が体験してきた美術教育における身体的運動や指導方法に焦点を当て、作品を発表する」とありました。広島市立大学芸術学部院生、展覧会名「美術をもう一度好きになるための予行演習」。興味があるので来てみたら、ギャラリーのオープン1時間前でした。

広島の街なかでジオキャッシング。30分かけてマルチキャッシュゲット。手に計算した座標が書いてある。

残りの時間、比治山へ登ってみました。一番高いところにあるのは放射線影響研究所。Wikipediaによると「外務省所管であり厚生労働省健康局所管の特例民法法人。被爆者の健康調査及び被爆の病理的調査・研究を行う研究機関で、日本国政府とアメリカ合衆国政府が設立・運営している。」とあります。僕が広島に来た平成2年の時点でこのカマボコ状の建物に古い昭和らしさを感じていましたが、ここ、昭和50年設立だそうです。

戦争の遺構巡りをした目線で目に止まるのは、標識の背後にある防空壕っぽいものを塞いだと思われる石組み。

モダンっぽさを意識したのかもしれませんが、この白地にくすんだ桃色と水色のカラーリングが新しさよりも古さを感じさせています。あと、このカマボコと。

そのちょっと先。陸軍墓地。はて、こんなんだったっけ?と思ったら2019年に整備されたとのこと。恥ずかしながら前は何度も通っているのに、足を踏み入れるのは初めてです。

切り取られた風景は古さを感じるのですが、切り取っている方はシャープで墓地という名前から感じる「夜間は怖い」といった感じはありません。

もともと比治山の山頂付近にあったものが原爆被害で終戦後移転をし、昭和35年にこちらへ遺骨が移された、とあります。日清戦争・第一次世界大戦時に広島で亡くなった中国人・フランス人・ドイツ人の遺骨も葬られている、というところに優しさを感じます、特に第二次世界大戦時には敵国だったフランス人の方の墓がそのままあるというところに。

明治期の墓碑には騎兵って掘ってあります。陸軍が機械化し始めた時代ですものね。

いや、これはこれは‥コロナ禍で人が密集する場面をなかなか見なくなったなかで、墓跡の側面が触れ合うひしめき具合。

規格はあるのでしょうが、高さ、頭の尖り具合に個性があって、亡くなった方々のパーソナリティを著しているのではないかと受け取ってしまう。

都道府県ごとのタグがついています。

四国の方々。

士官の方々は少しゆとりのある立ち方になっていらっしゃいます。

電信兵縛りとか、

船舶砲兵部隊縛りとか、

軍属の方とか、縦方向だけでなく横方向の集団の慰霊碑もたくさん並んでいました。

床に墓石の寝ている洋風な佇まい。

こちらにフランスの方が眠っているようです。

ん?土葬?と思ってしまう平面型の墓石、というか石棺?ゆったりとしたスペースになっていました。

小高い比治山から広島湾方面を見渡すことができます。人がワイワイと賑やかに集まるところでもないですし、ちょっと落ち着いた気分でゆっくりとしたいときにはとても良い場所です。

軽く立ち寄ったつもりが思いの外陸軍墓地が良いところだったのですっかり気分は墓地モードになってしましましたが、今日の本題はこちら。30分ごとにパフォーマンスをされているということなので、待ちました。

「美術や絵が好きで描いていたはずなのに、いつのまにか絵を描いているという自分が好きなだけになってしまっていた」
「美術という自由な表現の世界で、美大受験のために延々と行う石膏デッサンに何の意味があるのか」
「美術教育、という教育は一体何なのか」

といった問題意識から生まれたのは、それらを延々「美術」という文字を書写する行為に置き換えて一枚書いては指導者に些細な指導を受けて書き直し、また一枚書いては些細な指導を受けて書き直し‥を延々と繰り返していくこのパフォーマンスでした。来場者が居なくても30分周期のパフォーマンスを繰り返し、5日間の展示の間にこんな枚数になってしまった‥というのもビジュアルにも訴えるものがあります。

こんなことをするために美術を習っているわけではない!という心の声が聞こえてきます。でも、これまで描いた枚数はこんなことをするために美術を習っているわけではないという心の声が生まれてくるための肥やしになっていったのではないでしょうか。
教わるレベルの美術と、新しい価値観を生み出すという段階の美術があると思うのです。今回のこれは教わる・教えるということへの問題定義でしたが、そのことで新しい作品が生み出せているなら、それは教わるという下積みを踏み台にして、そのレベルを超えられたということなのではないでしょうか。

おかげさまで、とても充実した休日の午前中でした。

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