宮島接待

「私、宮島へ行ったことがないんですよね」という大阪のMAVさんと平日の休みが一致したので、MAVさんに朝一番の大阪出発で広島まで足を伸ばしていただいて宮島アテンド。「下」と「上」に加えて「裏」の僕の知っている宮島フルコース3本立てで巡ってみようと思います。

これまでの船着場よりも幾分海へ張り出した新しい宮島桟橋の運用が始まっていました。が、JRフェリーは二輪のチケット売り場の案内が不案内だし、JRフェリーの売り場の方の案内で向かった先は松大汽船の売り場だし、そこではGROMが原付扱いされないし、でなんだかグダグダでした。工事そのものもまだ完了ではないのですが、落ち着くまでしばらくかかるのかな。

厳島へ向かうフェリーが動き始めると、これから登ろうと思っている山々がぐいぐいと近づいてくる感じ。

10:00。港の駐輪場にバイクを置いて、歩いてロープウェイ乗り場へ向かいます。

鹿ってものすごく小さく丸まるのね。

改修工事終了日が未定という宮島の大鳥居。せっかく宮島へ来たのにこれじゃぁ残念、って思いますが数十年に1度しか見られない風景と思えばまぁ、とても珍しい風景。

平日月曜日の宮島がどの程度空いているのかは知らないのですが、一連の感染騒ぎと鳥居の改修工事が重なって、明らかに人が少ない状態なのだと思います。10時過ぎといえばもうお土産物屋も開き始める時間ですが、拝殿の入り口に人が並んでもいない状態でした。

ベストなアテンドを目指して、今回は潮位表まで見た上でどういう順番で島を巡るか考えてきましたから、ほぼ満潮の時間に厳島神社に入ることができました。

社殿は一部に単管フレームの簡易屋根のかけられた迂回路が設けられていたり海上の鳥居はビニルハウスで覆われているようになっていたりで、ちょっと興ざめするような絵になってしまう箇所もありましたが、千畳閣の五重の塔が見える側はいつもの風景。

ちょうど結婚式も行われていましたが、記念撮影はこちらの風景を背景に撮られていました。いつもだったら鳥居を背景に撮っているんですけどね。

回廊は、見方を変えれば長い橋です。

次に「上」へ向かうために宮島ロープウェイに向かいます。往復2000円くらいするのはちょっとお高いと思いますが、宮島はフェリーが安いし、島そのものの入場料とでも捉えればそれほど高くもないように思えます。気持ちの持ちようを挿げ替えて考えるの、大事。

紅葉谷へ向かう途中にある”佐々木八重子の店”の通りなのですが、僕はこんなに閑散としたこの道を日中に見るのは初めてですよ。お店が閉店しているとはいえ、本当に紅葉谷へ向かう道に人が居なくて寂しいのはちょっと不安になってしまうくらい。

途中乗り換えのある宮島ロープウェイの前半部分。お客さん自体が少ないことと「密閉された空間に長時間居る」事になることから、いつものように8人乗りのゴンドラに和洋折衷で詰め込まれて人種のるつぼみたいな状態になるのではなく、少人数でもグループごとに乗るスタイルでした。

宮島ロープウェイは谷筋にかけられているので、対岸から探してもほとんど見えず見つけるのが困難です。今日はこのロープウェイの延長線上が本州側のどこになるのかをしっかりを意識して見ておきました。

11:30。ロープウェイ到着駅の獅子岩展望台から。ここからの風景もとても良いのですが、振り返ると厳島の最高峰の弥山がそびえていて360度の海景の広がるパノラマではありません。

ロープウェイ駅から歩いて30分の弥山山頂へ向かいます。

山頂手前の道の分岐にある霊火堂に到着。

1200年、消えずに燃え続けているという火で御釜が温められています。中にはお湯(霊水‥鉄分たっぷりの茶色いお湯)が入っていて、柄杓でそのお湯を汲んで飲水できる、ということなのですが最近の感染騒ぎに配慮してかコップは置かれていませんでした。

堂内は煙で燻されて、堆積したススだらけ。

「消えない火」というのが消えない情熱・愛情に結びついて、恋人の聖地ということになっています。MAVさんとは小豆島の恋人の聖地、約束の丘展望台でも写真を撮った覚えが‥どんだけ聖地巡礼好きカップルなの。

消えずの火の種が燃え尽きた灰を練りこんで作られた陶器の地蔵も並んでいます。ブサ可愛いってやつです。

弥山へ。途中にお堂もあります。こういうのもひとつひとつ由緒があって、それを知ることでただの登山で終わらなくできるでしょうね。勉強って大事。知らないって勿体無い。

山頂へ向かう道中、ところどころ開けています。似島と広島市街。

弥山の山頂付近は岩山で、大岩が折り重なるように地形を作っているのでトンネル状になっているところも。ここはくぐり岩というところで、トンネルの屋根は「蓋」ではなくて、隣の岩に寄りかかるようになっているだけなので、地震の度に高さが変わっているという話も聞きます。ちょっと怖い。

山頂に巨岩がゴロゴロしている風景はなんとも不思議です。宮島自体が大きな花崗岩で、露頭となる山頂の岩が風化することで節理に沿って岩が割れて‥という話を聞いたように思います。

山頂に着く直前に12時の音楽が流れてきました。

12:00。弥山山頂展望台。欧米人率、非常に高い。

少しディープな宮島観光ということで、弥山から厳島で2番目に高い駒ヶ林へ向かう道を下ります。この道の途中にある干満岩、潮位に応じて塩水が溢れてくるという不思議な穴の空いた岩です。MAVさん、舐めてました。「海水とは言わないけれど、真水ではない」そうです。

12:45。駒ヶ林山頂。木の生えていない岩の丘。ここで食べる絶景ラーメンが宮島の最高の贅沢のひとつだと思うんです。や、おなかの空きまくった時間になってしまったので、「うまい!」と思わず声が出てしまう美味しさでしたよ。

麺、のびちゃうから。食べなよ。

下りのロープウェイは登りと違ってゴンドラに詰め込めるだけ詰め込まれたのですが、同乗したフランス人の親子の微笑ましいこと。紅葉谷のロープウェイ駅にずらりと並んでいた外国人をみて「なんだか我々が海外に来たみたい‥」とMAVさん。ほんと日本人少なかった。

14:15。「下」に降りてそのまま繁華街じゃなくて、大聖院へ。宮島にある寺院で一番古いお寺で、西暦806年の建立。ああ、今気がついたけれど、西暦806年って上の消えずの火の1200年間と繋がってくるね。ここ「戒壇めぐり」という狭い通路を巡るいわゆる胎内巡りがあるのですが‥行き忘れた(MAVさんごめん)!

長いお寺の歴史の中で何があったのかわかりませんが、境内にはウルトラ怪獣や、

ウルトラの母や父の石像も隠れキャラのように置かれています。純和製の善も悪も混在した価値観を懐深く取り込んでいるのでしょうか。

広島、というか宮島の銘菓紅葉饅頭は、宮島では各社が自前店舗で直接製造して売っています。味も餡子だけでなく、変わり種からキワモノまでいろんな味のものがつくられています。うちは変わり種を売っているお店のなかでは坂本菓子舗さんを懇意にしていて、山歩きしてきた休憩に昨年改装された喫茶のできる店内でお茶しました。やきいももみじと、餡の入っていない塩バターもみじ。

休憩中、妻から「木村屋でレーズン、チーズを、ミヤトヨでチーズ、アップルを。ミヤトヨのチーズは10個くらい」と指名買いの司令が飛んできました。MAVさんが「そういう買い方するんですか」と言われていましたが、うちは以前宮島にある各社の例えばチーズもみじだけを買って帰って食べ比べて「この味はこの店」と指名買いする店を選ぶようになりました。

ミヤトヨさんのアップル、残念、売り切れ。ちなみに「きむらや」さんは「木村家」と「木村屋」があるので要注意です。「角のきむらや」と言ってもどちらも角にあるお店なので区別がつきません。

16:00まえ。港に停めたバイクに戻ってきて「裏」へ。フェリー乗り場のある島の本州側の繁華街が宮島の華やかな表側だとすれば、江田島側の人が居ない側は宮島の「裏」で、観光地化されていない戦争時代の遺構などが点在しています。

鷹ノ巣高砲台跡へ続く元軍道は整備されているとは言いづらく、セローでは労せず進めてもGROMではぬかるみや深く積もった落ち葉に足を取られてなかなか厳しい道です。

港から15分ほどで砲台跡に到着。表側で時間を取りすぎたので日の入りまでの時間を考えると1時間少々で巡ることになるのですが、ここ、結構広いのです。

砲弾を叩き込む先の海からは見えない山の陰になったところにある砲台の跡。

おそらく意図的に破壊された半地下の弾薬庫。

当時の用便を追体験するMAVさん。

長い長い急階段を登って観測所へ向かいます。

海を見下ろす観測所。先日倉橋島の砲台跡の観測所を見てきたばかりですが、概ねスケールといい構造といい近いものがあって、当時の同じ規格で作られたものだということが推察されます。

半地下の棲息掩蔽部(せいそくえんぺいぶ:敵から見えないように隠した部分)。

掩蔽部の内部は8畳〜10畳ほどの広さでとても綺麗。

今回この部屋の壁に空いた丸い穴が、ここへ至る階段の途中にある穴と水平に繋がっていることを発見しました。砲台への伝声管か配線のための配管ではないかと思います。

少し離れた山頂方面へ歩いて行くと、石のブロックで作られた詰所のような構造物も見つかります。広さからいって人が寝泊まりするようなスペースでありません。

ここも観測機器を置いたのでしょうか。今は海側に木々が生い茂っているので、どれだけの眺望があったのかは推し量りかねます。

それにしても石のブロックを積んで基本的な建物の構造をつくる感覚、レゴですね。

その裏側。倉庫らしき穴。

中には木の柱が残っていたり表にはフックが剥き出しになっていたりして、いろんな想像を掻き立てられます。

じっくりと居座ればまだまだいろんな発見ができそうなところなのですが、日が暮れるので先へ進みます。

先ほどの高砲台跡から海岸へ降りたところに鷹ノ巣低砲台跡があります。こちらは敵船から丸見えの海岸線にあって、他の砲台が山の稜線の裏側にあるこの辺りの砲台の中では珍しいタイプの砲台跡です。

200mほどの海岸線に砲座が設置されていたと思われるのですが、メチャクチャに破壊されたのか海食されたのか、全容が掴みづらいです。それでもこちらは干潮になる時間を狙って来ましたので、砲台が海水に浸かっておらず、今まで来た中では一番全体が見えた状態でした。

普段ひとりでこういうところを巡ってると写真を撮ってもスケール感が伝わりづらいのですが、今回はMAVさんが「タバコの箱」替わりになってくれるので、積極的にスケールの基準として撮らせていただきました。

このあとさらに奥地の探照灯跡や普段僕が野宿している名も無い泊地を見て回って「裏」巡り終了。

17:00すぎ。日暮れ前に家に着ける時間で島をあとにします。本当なら表側の南の果てにある広島大学の施設内(以前は広島大学理学部附属宮島自然植物園だったと思うのですが、現在は広島大学大学院統合生命科学研究科附属宮島自然植物実験所となっています)の室浜砲台跡まで行けば普通に人が行ける範囲の概ね全て、となるのですが、こちらは道の途中に車止めのゲートが設置されてしまって、徒歩でなら入っても良いのかどうなのかがわからないので最近遠慮をしています。

それにしても朝、大阪を出発して、夕方までに宮島をこれだけ見て歩ければかなり充実した内容なのではないでしょうか。

んで、夜の部でMAVさんとあんな話からこんな話まで。歩き疲れたのもあって久々にクタクタになるまで酒に酔った〜と思える楽しい夜でした。引き回してしまって申し訳ないくらいですが、MAVさんおつきあいありがとうございました。

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