マリッジブルーシンドローム

離婚経験を持つと、好意的な意味と常識に心奪われたという意味の混在する意味での『真っ当な』世間の人の住む世界では、自分の存在が初婚の時とは違う膜に覆われてしまいます。厚くて硬いせに弾力があって、内から外が磨りガラス越しにみえるような、膜の中に居る者にとってはタチの悪い膜です。
それも、時間とともに少しずつ溶けてきて、まだ完全に取り払われたのではないのかもしれませんが、先方のご両親にはご理解頂き、自分の両親も納得し、離婚経験者と結婚するということにこだわりを持つ彼女の職場での立ち振る舞いもそれほど不具合のないように決まり、自分たちとしては入籍・ハネムーンというところまでやってきました。きたつもりでいました。

当人同士は好きあって結婚するわけで、早く一緒に生活を始めたいという気持ちがあります。それでも同棲するわけではなく、毎夜毎晩自宅へ彼女は帰っていく生活が続いていました。これを律していたのは、彼女の親御さんが順番抜かしやフライングを是としない姿勢を強く見せていたこともありますが、彼女もそれに強く応えたいという気持ちを持っていたことにも寄ります。そんなこともあって、結婚をしてもよいという条件のひとつに、彼女をきちんとうちの両親に紹介する、というコトを挙げられました。当たり前のように思われるかもしれませんが、自分の両親は遠方に住んでいて、自分の仕事も休みがとれないという状況で苦しい条件ではありました。それでも無理難題というわけではありませんから機会を設けて両親に彼女を紹介することができました。

ゴールがどこにあるかは明確に決まっていて、そこへたどり着くために下からあれこれ積んでいって、やっと入籍する日を決めてゴールに到着する見込みができたわけですが、入籍予定日の数日前になってうちの母親が「先方のご両親に会っておいた方がよいのではないか」と連絡してきました。コレも考えてみれば当たり前のことなのですが、当事の自分たちとしては彼女のご両親に許可をもらい、自分の両親に許可をもらったことで、入籍はできるものとすっかり思いこんでいましたし、周囲も入籍についてこれといって異議ありというコメントを発していませんでした（と自分では認識しています）。

前振りが長くなりましたがここからが今回の話のはじまりです。
うちの母親が広島へ来るのに都合がつくということで指定してきた日が入籍予定日でした。これは母親にその日に入籍する予定だということを伝えていなかったことが、全くもって自分のヌケていた点だったわけですが、自分たちはその日から旅行へ出かけるつもりでいました。それでも両方の母親が会っておいた方がよいという点で一致し、日程をずらして親同士が入籍日に会うということではじめは一段落つきました。
ところが、うちの父親が急な予定を勝手に入れられては困ると駄々をこね始め、予定日前日になって「行かない」と言い出したのです。うちの親としては両家の面通しというつもりだったのだと思われるのですが、彼女の両親にとっては手塩をかけて育てた娘の結婚を、式を挙げないにしてもせめて両家の親が揃って祝ってやりたいという思いでいたようで、言うなれば冠婚葬祭に片親しか来ないとはナニゴトだ、ということになってしまいました。

当事者6人の思い（予想）
　自分：結婚したい
　彼女：結婚したい
　彼女の母親：結婚に反対はしないが娘が結婚する相手の親の顔も見ずに娘を嫁に出せない
　彼女の父親：結婚は当人同士の気持ちが一番大切なので、当人の望むようにすればよい
　自分の母親：押し殺していた様々な思いを婚前にすべて解決したい
　自分の父親：結婚すればいい（他者の気持ちには無関心）

結婚前日の段階ではこういうキャラクター構成となっていたのだと思います。

自分たちは周囲の反対を押し切って、というつもりもなく、直接この結婚に関わる6人が全員「良かったね」といえることを望んで一つ一つ解決してきたつもりでした。
今回強く感じたことは、それぞれがそれぞれに希望的観測をもってＸデーに臨んでおり、直前でそれぞれの思いのズレに気付いて集団でマリッジブルーになってしまったということでした。それぞれに連絡と理解が不足していたわけです。

ここまでが昨日までの話で、Ｘデーを迎えた今朝、実家に電話をして直接父親に話をしたところ、拍子抜けするくらいに広島行きを快諾されました。母親が勝手に予定を決めたことに父親としての名誉が傷付き、息子に直接お願いをされたことで、名誉が回復したものと思われます。昨晩、彼女の父親が別れ際に「ホント、人ってむずかしいねぇ」と言われていましたが、うちの家族の場合難しさの種類が違うようにも思います‥。