自宅の着工前に設計図面をもらった15年前、SketchUpという3Dデータの作成ソフトと出会って、試行錯誤しながらミリ単位で正確な自宅の3Dデータを作りました。そのデータをなんとかして3Dプリントに使えないか、と取り組んでみました。
■SketchUpで整えて.stlでエクスポート
調度品なども内部に作成してあるデータだったので、ある程度残しつつ、半分実験のつもりでこのまま縮小してみました。画面空間内で実寸の建物を、1辺9cmほどに小さくするのって、結構豪快な縮小率。
保存は.stlで。
■Autodesk Fusionでサイズ調整
.stlをそのまま.gcode化しようとCuraで開いたらうまくいかなかったので、一旦Fusionで開きます。SuketchUpでサイズ調整したはずなのにちょっと大きかったので、ここでサイズを印刷用の実寸に整え直して.stlで書き出し。
■UltimMaker Curaでスライス
.stlファイルをCuraで開いてスライスの設定をします。
インフィル(空洞部分の補強用リブ)の密度はデフォルト20%のところをスピード重視で5%にしてこのくらい。インフィルの種類がいくつもあって、この選択も仕上がり速度に結構影響します。一番単純な「グリッド」がスピード面では優秀なようです。
「ビルドプレート密着性」のデフォルト設定が「スカート」のところを、「ブリム」にすることで底面のプレートの仕上がりが良くなりました。
時間を追いかけながら印刷工程をプレビューできる画面があるので、それらも参照しながら設定を詰めて、.gcodeに変換します。
ここから印刷の話。まず最初の1棟目の印刷。
夜にセットして翌朝、6時間でここまで刷れていました。図面通りとはいえ調度品の配列など妙にうちっぽい。
ガレージにバイクも!
窓ガラスはデータとしてはあったのですが、薄すぎて無視されたのでしょう。開放的なお家になっています。リビングのソファーにテレビまである。
ここで問題発生。ベランダの屋根部分は庇になっている部位が長く、その底面のアウトラインを出力した時点で支えがないものだからヘナヘナと垂れ下がってしまっています。
1階部分も庇があるし、それ以前に1階の屋根はどうなってんだ?と覗いてみたら、デロデロと垂れ下がったフィラメントが‥。ここで止めるのももったいないのでこのまま進行します。
密閉された空洞部分はインフィルが格子状に組まれているので、屋上部分は平滑な面が作れそう。勉強になりました。
できた。出力時間、10時間23分。
ガレージ奥のラックや工具箱も再現されています。小物が細すぎて表現しきれなかったフィラメントが渦を巻いています。
アイランドキッチンやら、その奥の電子レンジや冷蔵庫、階段部分の張り出しなど、まるで、うち。
「チェーンメイルみたいな複雑な構造のものの一発出しの方が造形としてはインパクトあるんでしょうけれど、家は説得力あるね」とうちの妻。
屋根の庇になっている箇所は軒並み角が甘くなってフィラメントが垂れています。こういう箇所は下から支えるサポートが必要なんですね。
というわけで2棟目。
ここまで出力したところで、フィラメントが下の層と定着しない箇所ができてしまって、その上は下層がないものだからフニャフニャと空中にフィラメントを出力してインスタントラーメンの大量生産になってしまったので、中止。
凹み部分がうちのガレージ空間で、敷地面積に占めるガレージの広さがよくわかる。
というわけで3棟目。これまでの失敗を活かしてシンプルで早い印刷を目指して設計し直してチャレンジ。
ああああ、外側への張り出しには気を遣ったのに、内側への張り出しに配慮が足りませんでした‥ベランダの内側のエッジ部分が乱れています。こういう箇所はあらかじめ下側に補強を入れておくか、内側に張り出しのある時はインフィルの密度を高くするか、ですね。
前回庇の部分がうまく出力できなかったので、その下にランナーを追加しています。仕上がってからうまいこと手で折れました。
屋上の塗りつぶしに入りました。いろいろ省略したり工夫しりした結果、前回10時間くらいかかった印刷も3時間少々で印刷が終わりそう。
できた。
キャラメルを組み合わせて作ったような家。設計士さんに何ができて何ができないのか、禁則事項を聞いて内外ともに僕がデザインしました。
4階建てにしたら、強烈。キャラメル感増してカッコいい!
15年前、設計図面から画面の中にこの家を建てた時「未来がやってきた!」「これで実際の建物の状態分かるし、実物モデルなんてもういらないじゃん!」って思いました。こうして立体造形してみると、リアルって説得力あるな、って思わざるを得ません。いろんな意味で想像し得なかった未来。
サポート無しは厳しい条件ですね。サポートは使わないのですか?
自分ならフロアごとに分割造形します。その方が中を覗けて楽しそうなので。
>ねじさん
コメントありがとうございます。そもそもサポートが何かもわからない、3Dプリンタの知識ゼロ状態でスタートしていますので、日々勉強です。今はスライスソフトをいくつか毎日試している段階です。