僕が子供の頃は三段峡といえば鉄道でも行ける場所、逆にいうと可部線の終着点で秘境の入り口、というイメージだったのですが、2003年に可部駅より先の路線が廃止になり(その後2017年に可部から2駅のあき亀山駅までが復活)、三段峡は本当に秘境になってしまいました。といっても、この界隈は僕の近所徘徊のエリアで、廃線になっても今なお残るトンネルや高架を端的に目にすることができますし、広島(三段峡)と浜田(下府)を結ぶ幻の鉄道、今福線の遺構も何度か僕のブログに登場していることもあって、いつかツーリングテーマとして追いかけてやろうと思っていたエリアでした。
全国的に秋晴れが保証されているこの日、ムスコの陸上大会の送迎の関係で早朝タンデムで競技場へ送り届けてから4時間で迎えに戻るという縛りの中、とりあえず戸河内まで来てみました。朝早くて気温が低いので日当たりの良いところへ来てみると、何やら面白そうなものが。国土地理院の電子基準点だそうです。GPSを利用して国土の監視をしているモノ。
ギラギラ光っていて80年代のSFに出てきそうなオブジェ。
冷え込んだせいか動きの遅かったカエルも日差しを浴びて少し活動的になったようです‥って、この雰囲気、ここもしかしたら旧可部線の線路上では?
これこれ、線路跡だ。と、いうことで、突然思い立ってここから旧可部線を追いかけることにしました。この日僕は旧上殿駅のあった「道の駅 来夢とごうち」あたりから三段峡へ向かって進んで、折り返して加計まで戻って行ったのですが、ややこしいので加計から三段峡へ向かっての流れで記事を書きます。ちなみに2003年の可部から三段峡が廃線になった当時、
[広島]-[横川]〜13駅〜[可部]〜13駅〜[加計]-[木坂]-[殿賀]-[上殿]-[筒賀]-[土居]-[戸河内]-[三段峡]と駅が並んでいました。この日は太字の駅の区間を追いかけました。
加計って僕の中では立ち寄るような町ではなく通り過ぎるだけの町だったのに、鯛焼屋よしおさんを教えていただいてからは目的を持って立ち寄る町になりました。
旧加計駅。地形的に可部方面から北へ上ってきた線路が南へ折り返す場所にあるせいか、町がある程度大きいせいか、ここはひとつの節目に感じます。調べてみると汽車そのものもここを一旦終着点として折り返していたので、可部から三段峡方面へ向かう人の乗り換え駅でもあったようです。1面2線の島式ホームの一部が今でも残っています。
すぐ近くに三段峡方面から単線が複線に切り替わる分岐があります。
その先、キハ28が保存されています。たまに動かしているそうです。
さらにその先、三段峡方面、線路はブツリと途切れて、そのむこうに線路の敷かれていない鉄橋が見えます。廃線になった路線の線路や枕木はほとんどが取り除かれています。
加計から川沿いの国道を走ると当時の線路が敷設されていた築堤を見上げることになるので、築堤より山側の道へ入ると築堤を見下ろしながら走ることができます。
当時は踏切があった場所でしょう。線路と一般道が交差するところ。今は道路ではなく線路側が遮断されています。
加計の隣の駅、木坂駅。
以前、NUDAで走っていてふと目に止まって訪れたことがあります。
軌道の敷かれていたあたりはすっかり緑の海。
待合室のあと。もともと無人駅だったとのこと。
切符の回収ボックス。昔住んでいた地域の無人駅にも設置されていました。
自撮り用ミラー。
やばい、この調子で紹介していたらキリがない‥先は長いです。
82段のバリアブル階段、と過去の僕の記事に書いてありました。
これ、何も知らなければただの道ですが、元線路を一般道路に転用した道です。
木坂駅から殿賀駅への峠越え。
この元線路を走って峠を越えて目に飛び込んできたのは‥
殿賀駅。なんと車掌さん目線!思わず叫んだ。
駅って山側からも川側からもアクセス良い方が便利だからそのように作られたようで、ここは駅として使われなくなってからもホームが地域の通路として使われているようです。なんの制限もないのでバイクでもアクセスできます。
ひとつ前の木坂駅と似たような無人駅。
一部煉瓦調のところとか、駅舎はほぼほぼ同じ仕様です。
川側から駅へのアプローチ。ここも非常にバリアブル。
殿賀駅の先はトンネルになっていました。こういうの活用すれば良いのに、と思いもしますが、一般道路に転用とかするとトンネルの維持管理メンテナンスが大変なんでしょうね。
九州では廃線跡をサイクリングロードにして成功していましたが‥このフラットダートを活かしてオフロードツーリングコースにして欲しい。
さて、戸河内インターあたり。「道の駅 来夢とごうち」なんかがある地域なので、ついついこの辺り一帯を「戸河内」と呼んでしまいますが、ここにあった駅は上殿駅。
当時モノかわかりませんが、軌道敷跡にバラスが撒いてあります。
戸河内インター近辺はこうなっています。上殿から土居までは国道191号の通っている太田川沿いに線路を通すことができたにもかかわらず、筒賀の住民の強い要望でわざわざ山を貫いて筒賀駅を作ったそうです。
筒賀はよく走るところなのですが、数年前ふとこの風景をみて不思議に思ったのが可部線(というかこの辺を通る廃線)に興味を持ったきっかけでした。どう見ても線路が通っていそうな築堤なのに、高架の右側がバッサリカットされています。
左側は国道186号線の上を通って、そのまま山へ突っ込んでいる。近くへ行ってよくみると入り口の塞がれたトンネルがありました。これは面白い!と当時思ったのですが‥何で筒賀に線路?当時は可部線の一部だとは気が付かなかったのです。
このあたり、線路が一般道に転用されています。筒賀駅は知らずにスルーしてしまったのでまた今度寄ってみます。
線路は国道をもう一度跨いで、
山の中へ突っ込んでいました。こうやってトンネルを経由して太田川側へまた戻るのを知らなかったので、ずっと可部線の一部だとは気づかずに筒賀で折り返す引き込み線だと思っていました。
旧可部線は筒賀からトンネル経由で太田川をまたぐ鉄橋へと繋がっていました。
いやー、これは堪らん‥トンネルはもう森に埋もれている。
反対方向は田園地帯を築堤が貫いています。この路線はもともと電化されていないので、架空電車線を通すためのフレームや塔がないからスッキリしています。ここを黄色いキハがグオーっとディーゼルエンジンを響かせて走っていたわけですね。
話が前後して申し訳ないのですが、この日の僕の旧可部線を追いかけるスタートはここからだったのです。こんな橋がもう全く使われていないなんて‥と、いきなりときめいたのが分かっていただけたでしょうか。
田んぼの区画と線路は平行に並んでいるわけでなく、線路はわがままに田園地帯を突っ切っているので、線路に近づいたり遠ざかったりしながら追いかけることになります。
駅発見。土居駅です。
表通りは消防関係の建物を建てるために通行止めになっていたので、裏からアプローチ。
夏があと数回訪れたら、もう登れなくなりそうな階段。
このあたりの住人の方たちは、こういう廃線の遺構が放置された状態で平然と残っているのをどう捉えているんでしょうか。
今回追いかけている加計から先の路線は1969年(昭和44年)に開通したので、僕と同い年なのです。この寂れ方をみると、僕も老けるのはしょうがないか‥と思えてしまいます。
土居駅から先はトンネルになっていたので、僕は山を迂回してその出口へ。
線路って川沿いを通すのが勾配も少なく一番楽だと思っていましたが、こうして可部線を追いかけてみると山に穴を開けてほぼ一直線に目的地へ線路を通しています。開通が昭和44年ということはもうすでに川沿いには人が住んでいて用地買収の関係で難しい話になっていたのかもしれませんし、山を迂回したルートよりトンネルを掘る方が部材にかかる費用が安く済んだのかもしれません。単純に一直線で結んだ方が開通後の移動の時間やコストの削減になるからかもしれませんけれど。
安芸太田町役場の向かいが旧戸河内駅です。
駅グッズ。
かなり広い。大きな駅だったのでしょうか。旧戸河内町の中心地だったようです。
終点へ向かいます。
都会の人口密集地ならこういう土地も無駄にしないのでしょうが、この辺りは軌道敷跡地がそのままなのがとても良いです。
にしても、この橋とか、何かに活用できないかなぁ。
川土手を走って国道へ戻ろうと思ったら‥高さ制限1.2mくらいでしょうか。チャリでも厳しい。
さらに線路跡を追いかけていくと‥梯子‥。
登った先は塞がれていましたが、トンネルから流れてくる冷気がヒンヤリ。
穴あき隧道。
旧三段峡駅への最後のトンネル。トンネルが他とは違う様子で塞がれています。
戸河内‥僕のうちの近くにある中国醸造さんのウイスキーがトンネルを利用した貯蔵庫で寝かされているというのは知っていましたが、ココでした。いっときうちで飲むウイスキーはこれでしたが、最近しばらく買ってないな‥今度中国醸造さんへ寄ってみよう。
旧三段峡駅手前。平坦な芝地‥キャンプ場にするのはどうでしょうか。
駅舎があった場所は観光案内所になっていました。裏手は枕木がテラスになっていました。
ここでも枕木が余生を‥。
旅の終着点。
への字に曲げられた線路が、横書き文書のピリオドのようで、とても感慨深い‥。
現在自然災害で三段峡の正面口となるこちらから三段峡へはアプローチできないそうです(深入山から入る出合橋からなら三段峡へ歩いて行けます)。広島県を代表する名勝だというのに鉄道もなくなり、アプローチもできない‥人も全く居ませんでした。
いやしかし、4時間という縛りがありましたが、この充実っぷり。天気も相まってむちゃくちゃ面白い探訪でした。時間をかけられなかったのでおそらく見落としもたくさんあると思います(筒賀駅をスルーしたし‥)。また近いうちに、今度は丁寧に訪れてみようと思います。
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