雪山アタックにあたって

GROM×スタッドレスタイヤでの雪道走行はこれまでのバイク楽しみというか常識を思い切りひっくり返してくれました。冬はバイクのオフシーズン‥とまでいかなくても乗る機会が確実に落ちて春を待ちわびるというのが通例でしたが、今では冬が、というか雪が積もるのが待ち遠しくて仕方ありません。身の回りに雪道走行を楽しんでいる方も増えてきましたが、ディープに楽しむには危険も伴いますので、ここでこれまで得た経験から雪山へ向かうためのまとめを記しておきます。

通常装備に加えた携行装備について

カイロ
言うまでもなく、暖をとるため、です。スキーと違って体を動かさないので、温かい装備をしたつもりでも走行中の体温の低下は免れません。腰・胸元(首元)を温めるのが効果的です。他にも手首が意外に冷えるので靴下に貼るタイプを貼っておくと良いです。アキレス腱のあたりに靴下の外側から貼るのも効きます。

防水ブーツとスパイク
雪山で足が濡れてしまうとまず乾きません。絶対に、確実に水の入らないブーツを用意しましょう。靴底が積雪や凍結した路面に強いかどうかも非常に重要で、坂道でバイクを押すことになった時に生きるか死ぬかの問題になります。一時的に靴に巻き付けるタイプのスパイクも売られているので携行しておくと安心です。僕はワークマンの防寒防水シューズを愛用しています。

ジャンプスターター
バッテリーが絶対的に信頼できる場合は不要ですが、弱っていると低温の長時間放置などでセルが回せなくなることがあります。万が一の場合の携帯の電源としてもジャンプスターターは保険として持ち歩くべきです。ただ、ジャンプスターター自体も低温で能力が落ちることも考えられるので、服の内側に入れて持ち歩くかカイロを貼った袋に入れておくかなどして、確実に使えるようにしておく必要があります。雪道ではタイヤのグリップが期待できないので、下り坂でも冷えてしまったエンジンの押しがけはできないと思ってください。

ガストーチ
解けた雪が低温で凍結することでフロントブレーキが固着してタイヤが回転しなくなるということがありました。その際、緊急脱出のためにガストーチがあると良かったなと思いました。ガスボンベも家庭用のカセットコンロガス(ブタンガス)だと低温で使えなくなることがあります。気温0度前後ならボンベを手のひらで温めればなんとか使えましたが、できれば低温にも強いLPG(プロパンガス)入りのボンベを用意しておくと良いと思います。

携帯シャベル(のようなもの)
雪かき用にシャベルがあると便利です。新雪の中に携帯を落とした、とか脱出路をつくるために雪を大量に動かさなくてはならない、というときのために。シャベルとまではいかなくても、下敷きや薄めのまな板など携行しておけば、手で雪かきするよりは十分高い効率が期待できると思います。

お風呂セット
道中、特に帰路で温泉がある場合は寒さと疲れを解すために入浴もアリです。

雪道を走るにあたって

ノーマルタイヤのすすめ?
できることならいきなりスタッドレスで走るのではなく、GROMのオンロード用ノーマルタイヤで何度か雪道を走っておくべきです。というのは、スタッドレスタイヤは想像以上にグリップが良いため破綻しどころがつかみにくく、特にフロントが破綻してしまったときはもう転倒は避けられないような状態になると言えるからです。ノーマルタイヤは限界が低いので扱いも慎重になりますし、どうすれば転ばずに済むのか、を体得するのに向いています。
たとえノーマルタイヤでも、車体が直立していて人間も含めた重心が左右にずれていない限りコケません。下り坂では直線であれば走っていてコケることはありませんが、車体が傾いたりハンドルが切れたりすると立て直しできなくなった時点で転倒は免れません。上り坂はノーマルタイヤでは登れませんが、坂道までにある程度の助走距離がある場合はそこで加速して、上り坂はソリに乗ったつもりでツー‥っと勢いで進んでいけばクリアできます。
ということを踏まえた上でスタッドレスタイヤを履いて走ると、かなり安心して快適に走ることができます。

スタッドレスタイヤでも‥雪山ならではの路面状況と相談しながら
シーズンが始まったばかりの新雪の路面の場合は雪の下も平坦なのでとても走りやすいです。が、ある程度車が走った後に雪が降り積もったりすると、雪の下は凍結した轍で凸凹していたりして、それが雪の上からは見えないのでとても運転が難しくなります。路面が凸凹に凍結していると、それを乗り越える際にフロントタイヤがとられてハンドルが切れてしまい、バランスを崩しやすくなります。轍のある路面は車のタイヤの走ったラインから外れないようにするよう注意したいところです。
雪山では自分が走っている山の斜面の方角がどちら向きなのか把握し続けることも大変重要です。南斜面は雪が浅く、北斜面は車の走った轍が凍っていて深かったり、雪そのものが深かったりします。地図を先読みしてこれから向かうルートが山のどの斜面を通るのかをしっかりと把握しておきましょう。
また、下る分には少々雪が深くて路面が悪くても何とかなりますが、上りについては走破できる条件がかなり厳しくなります。最悪なのは谷へ降りて行った後に上れなくなってしまう事です。初めて走る道は等高線が表示できる地図等で自分の下って行った先に上り道があるのかないのかを確認しておくべきですし、「雪道走行を楽しむ」のことを最優先の目的にして、端から先が読めない知らない道は走らないという割り切りも必要です。
上り坂では絶対に停止してはいけません。斜度が緩くても再発進が非常に難しくなります。平坦地でも再発進でリアタイヤが空転して横に逃げて発進が難しいことがあります。ピンチの場合はある程度車体が安定するスピードが出るまでは両足で地面をバタバタ漕いででも頑張りましょう。できれば停車は下り気味の路面で。
上り坂でエンジンが力尽きて止まったり、タイヤが空転して進めなくなってしまって停車してしまう場合もありますが、坂道に対してまっすぐ上を向いた状態で停まってしまうと路面が凍結している場合タイヤが回転していなくてもそのまま谷側へ滑り出してどうしようもない状態になってしまうことがあります。上り坂でこのままでは停車してしまうのが確実だと思った時点で、車体を斜面に対して90度横向きで止める努力をした方が良いです。また、その状態になってしまうような路面ではそこから坂道の上へ向かってのリカバリーは難しいので、一旦谷へ下って、できれば助走をつけて上りなおすのが良いです。
上り坂でどうしても登らない時は、着座で走るのではなくバイクを降りて半クラッチを使いながら押してやるとダメだと思っていたような坂道でもクリアできることがあります。
走破できる雪の深さは路面の傾斜と雪の硬さにもよりますが、平坦な新雪でもフロントタイヤが半分以上隠れるくらいになると雪にぶつかる抵抗でバイクが進めなくなってしまいます。

場合によっては無理せず来た道を戻るということも大切です。ただし、これまで下って来た道が上りになることにも注意して、これまでに走ってきた道が逆向きに走ってもクリアできるかどうか常に頭に入れておく必要があります。また、雪道は吹雪くと同じ道でもあっという間に状況が変わってしまいます。

雪道向けセッティングについて

ギア比は現地までの自走に支障がないようであればローギアードにした方が走破力が上がります。ノーマルがF15T、R34Tですから、前側のドライブスプロケットを1丁小さくするのも後ろ側のドリブンスプロケットを2丁大きくするのも似たようなものです。ノーマルがまるでダメというわけではないのでそのあたりはお好きな程度に。ローギアード化は路面を掻く力を増やすというよりも、極低速でエンジンが粘って止まらないことを主に狙っています。
GROMの場合フロントタイヤとフロントフェンダーのクリアランスが狭いということにも注意が必要です。タイヤとフェンダーの間に掻きこんだ雪が詰まりすぎると、スタッドレスタイヤがそこでグリップしてしまってタイヤが回転しなくなります。これについては4点止めのフロントフェンダーを1段上にずらして2点止めするという方法で回避できます。

2018年の1月に雪山を走った動画を載せておきます。

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