愛媛ナントカ練習会にむけて

週末、ノービスライダー向けの講師を依頼されまして、愛媛の二輪車交通公園で「ナントカ練習会」というジムカーナ向けの講習することになりました。テーマは複数居る講師それぞれに任されているので、僕は「車速で旋回半径をコントロールする」ということをメインに講習しようと思います。その(自分向けの)メモ。

◆序:バイクはどうやって曲がっているのか
自動車はハンドルを切って進行方向を変えていますが、バイクはハンドルが進行方向を変えているのではなく、最初の旋回力を生んでいるのはリアタイヤです。1輪車や手放し運転の自転車でも好きな方向に曲がっていくことができることから分かる通り、自分の手でハンドルを切らなくてもバイクは曲がっていくのです。

自動車のタイヤは断面が四角いのですが、バイクのタイヤは断面が丸く弧を描いています。スリップを防いだりすることを目的とするなら、自動車みたいに四角くして接地面を増やせばよいのでしょうが、そうするとバイク特有の軽快なハンドリングが失われます。バイクのタイヤを外して、傾けて転がしてやると、傾いている側にタイヤは曲がっていきます。同じ動きが車体に固定されているリアタイヤにも起こります。車体が傾くと、リアタイヤが傾いている側に曲がろうとする旋回力がターンのきっかけとなるのです。
その際、フロントタイヤ‥というかフロントのステムにくっつているフロント一式は車体の傾いた方向にパタンと倒れて舵角がつきます。これによって倒れた分だけ強く曲がることができます。強く、というのは、曲がるきっかけを作るのはリアタイヤでも、フロントタイヤが曲がる方向を決めている、ということに間違いはないからです。その証拠にハンドルはまっすぐ固定したままバイクを傾けて押すと、バイクは傾いたまままっすぐ進みます。

キャスター角(フロントフォークの寝ている角度)が浅いと、車体の傾きに対してすばやくフロント一式が内側に倒れてくるのでクイックに曲がります。アメリカンバイクのようにフォークが寝ていると、車体の傾きに対してフロントの反応が悪くなります。これは一見ネガティブに感じますが、考え方を変えれば直進安定性が高いということですから、ひたすらまっすぐ走ることを目的とするならアメリカンのようなフォルムはポジティブな車体構成といえます。

◆本題:バンク角一定でも旋回半径は変えられる
バイクはバンクすることでハンドルが内側に落ち込んできて曲がります。旋回半径はバンク角の深さ、ハンドルの切れ角でコントロールできます。しかし、バンク角、ハンドル切れ角以外でも車体の旋回半径をコントロールしているものがあります。それは車速です。

ジムカーナにおいては基本的にフルバンクに近い角度を維持し続けて走るので、車速による旋回半径のコントロールは非常に重要です。起こさなくてもよいところで車体を起こすとタイム的には間違いなく損をします。
イメージしやすいように例を挙げると、10円玉を斜めにして転がすと回転の中心に向かって渦巻状にラインを変えながら旋回半径を小さくしていきます。なぜ旋回半径が小さくなっていくのかというと、別に10円玉がバンク角を変えながら転がっているわけではなく、速度が落ちているからです。同じバンク角でも車速が低い方が遠心力による外への引っ張りが弱くなるので旋回半径が小さくなります。
ということで、バンク角は一定でもアクセルのオン/オフやブレーキングでスピードを変えるとラインを変えることができます。同じ方向にターンが続く場合は、車体を起こす必要はありません。車速のコントロールでラインを変更しましょう。
今日の実習は、連続右ターンのセクションでそれを実感してもらいます。

◆おまけ:ポジションのセット
ジムカーナ用に限らず、マシンづくりの重要なポイントは「気になる部分をなくしていく」ことにあると思います。そのためには気になる部分に気づける人になることが大前提ですが‥。
僕は着座位置、ステップ、ハンドルの高さや角度が少しでも気になるとその場で直しています。それだけではなく、ペダルの足へのかかり具合、レバーの位置、クラッチやブレーキのかかりはじめる握り代まで、ちょっとでも気になったら直しています。気になる部分への気遣いは間違いなくタイムに影響します。
サスペンションやタイヤのセッティングを自分の走りに合わせていくにはどうしたら良いのか、というのはちょっと高度な技術や経験が必要になりますが、ポジションのセッティングなら気構えずにすぐできると思います。自分にとって合っているのか合っていないのか、自分に嘘をつかずに整えていくだけでずいぶんライディングに集中できるようになりますし、そのままタイムに直結していくでしょう。

◆おまけ:タイムを稼ぐジムカーナの楽しさ
おそらく、同じ走りを何度繰り返してもタイムは伸びません。僕の感覚では、走りながら重箱の隅をつつくようにタイムの稼ぎどころを見つけた上で、さらに重箱の隅の隅をつつく感覚が得られるようになってくると、取りこぼしていたタイムがボロボロとほじくりだされてくる感じです。個人差はあるでしょうが、自分にとってのギリギリのさらにその上のギリギリを拾ってくる感じが普段の生活と違う、また同じライディングでも一般道では味わえない面白さだと思っています。

4 Comments

Mt.Sugi

ありがとうございました。
カープでスピード出し過ぎてて曲がれない‼︎ な状態を意図的にやるのは面白かったです。

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>Mt.Sugi
車体を起こさずにタイヤの特定の面を路面に当てたままで走り続ける、というのが板につくまで(タイヤがもったいないけれど)がんばってください!

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